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百万長者と結婚する方法のCisaraghiのレビュー・感想・評価

百万長者と結婚する方法(1953年製作の映画)
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マリリン・モンローが主役だと思ったら大間違い、これは明らかにジャケット詐欺。役柄と出演時間からすれば、マリリンは、ローレン・バコール、ベティ・グレイブルに続く第3クレジットだろう。

ローレン・バコール、この時28歳くらいなのにすごい貫禄。声だけなら58歳でもイケる。これなら夫君ボガートと年が25歳離れていても十分やっていけただろうと思える。モンローをも霞ませるローレン・バコールの圧倒的な存在感と洗練されたカッコよさが見もの。主役だし。

モンローは完全にコミックリリーフとしての役まわり。コンタクトレンズが普及していない時代のコッテコテのど近眼ギャグはもはや古典、いいもの見せてもらった。お色気はそこまででもないコメディエンヌ・マリリンがキュート。

あまりよく知らなかったベティ・グレイブルさんは、ピンナップガールとして一世を風靡した方らしい。今で言えばグラビアアイドルにして超人気女優という感じ?昭和の日本にもこんな庶民的で明るくてチャッカリしてて愛嬌のある女優さんいたね、と思わせるタイプ。この時27歳だったモンローと10歳違いというのが信じられない。100万ドルの脚線美と謳われたらしいおみ足は、今の時代の基準で見ると、え?なのは仕方ないが。オツムの弱いセクシーな金髪キャラを売りにしていたのはモンローが最初ではないってことだけど、この映画で見る限りベティ・グレイブルはカワイイけれど特にセクシーではなかった。

お話はモデル稼業の女3人が、"人生最大のステップアップ"、つまり玉の輿(懐かしい響き…)に乗ることを目指し、頭と美貌と若さを駆使して策を練るが…という大体予想のつくストーリー。露骨にシンデレラを目指す現金な話であると同時に夢の王子様ものでもあって、古臭いのは否めないが、女性が生きていくために考えることはジェイン・オースティンの時代からこの時代まで大して変わってないのだなと思う。

最初にフルオーケストラの演奏場面が長々と入る。有名な映画音楽を数多く生み出した偉大なアルフレッド・ニューマン作曲指揮らしいが、その曲も今聞くとどうも古臭い。映画音楽は映像と音楽とドラマとの相乗効果があってナンボなので、オーケストラが演奏する映像だけ見せられても正直退屈。よってこれ以降真似する映画は出なかったのでは。劇伴は悪くない。
 
ファッション、特にドレスは全く古びてなくて洗練されているし、きっちりセットされた髪型などは今の時代にはないので、かえって新鮮に感じる。ファッションショーの場面もあり、ファッションが目玉の映画だったのか、全身が入るショットが多く、顔のアップはほとんどなかった。画質がよくないのが残念。

ベティ・グレイブルが一人NYを離れて雪山に行く場面もなかなかの見もの。設定ではメイン州になっているが、実際はアイダホ州の標高1800㍍のところにある山岳リゾート・サンバレーで撮影されている。サンバレーは1930年代に開発され、ヘミングウェイが紹介して以来有名になり、多くのセレブが訪れるようになった場所らしい。映画の撮影場所としても人気で、1930年代から50年代にかけて頻繁に映画に登場している。1941年には『サンバレーセレナーデ』という映画も作られている。周囲を取り囲んでいるのは3000㍍級の山々。

Disappointments become a normal part of life (多分こんな感じ)というセリフがとてもよかった。その前のセリフとコミだとさらにいいのだけれど、ネタバレになるので残念ながら書けない。他にもセリフは無理がないわりに気が利いてるのが多くて結構好き。

ハンバーガーにかぶりつくローレン・バコールがとってもカワイくて、初めて見た『三つ数えろ』ではそれほどでもなかったけれど、クールなだけじゃないお茶目なローレン・バコールが見られてファンになった。
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