銀色のファクシミリ

ドロステのはてで僕らの銀色のファクシミリのレビュー・感想・評価

ドロステのはてで僕ら(2019年製作の映画)
4.6
『#ドロステのはてで僕ら』(2020/日)
劇場にて。時間の乱れから起きる騒動の物語でありながら、考え抜かれた構成と展開で、誰も置いていかない分かりやすさが秀逸。結論は「2020年の誰にでもオススメできる映画NO.1の秀作」です。お話の温度とキャストの演技の温度がバッチリな作品なのも良き。

あらすじ。ある雑居ビルの1階でカフェを営む主人公カトウ(土佐和成)。店じまいを店員のアヤ(藤谷理子)に頼んで住居であるビル2階の部屋に上がると、つけっぱなしのテレビに自分が写っていた。画面の中の自分は「オレは2分後のオレ」と語り、1階の店に降りてこいとうながすのだった。

感想。2階のモニターは2分後の未来と会話できる「未来テレビ」、1階のモニターは2分前の過去と会話できる「過去テレビ」として機能しているとわかったが、もちろん原因は不明。どうしたものかと思っているところにカフェの常連客たちが現れて…と展開していく。

常連客たちの日常よりややオーバーな演劇的なテンションが、SF(少し不思議)的な非日常の物語にベストマッチ。状況を少しづつ確認する登場人物たちの行動が、ちゃんと観客のための「初級編・状況の把握」→「中級編・状況の利用」→「上級編・状況の○○」と展開していくので、とても分かりやすい。

たった2分間のズレしかないモニターがあるという時間トラブルが、どうやって大きな騒動になるのか、そして大騒動はどう収束するのか。もちろん触れるわけには行きませんが、頭がこんがらがることなく、いい映画みたなあという感想に落ち着かせてみせる見事さ。未見の方は是非とも。感想オシマイ。

追記。2020年には同じく時間をテーマにした大作『TENET』がありますが、この『ドロステのはてで僕ら』とバジェットで比較すれば大きく差が開くでしょうが、満足度では互角の勝負でした。

ただ『TENET』のヒロインはあの世界観にマッチしたエリザベス・デビッキさんという100点満点で5億点の女優さんでしたが、この『ドロステのはてで僕ら』のヒロインは、みんな大好き・朝倉あきさんなので、こちらは100点満点で10億点。結論は5億点vs10億点の映画なのでどちらもオススメです。お前のサジ加減じゃねーか、というところで追記もオシマイ。