私の知らないわたしの素顔
ジュリエット・ビノシュ目当てで鑑賞。
今作では心に深い闇を持つ女性を見事に演じ、また違った一面を見せてくれました。
バツイチで大学教授のクレールは、若い恋人のリュドが自分を避け始めたことに気づき、Facebookもブロックされてしまう。何とかリュドの様子を探ろうと、Facebookで20代女性の "クララ” と偽り、彼の同居人であるアレックスに近づいていくことに。
物語はクレールがとった一連の行動をカウンセラーに告白しながら、振り返っていく流れ。
SNSで疑似恋愛にはまって壊れていく女性の物語かと思いきや、秘密や虚が随所に散りばめられ、二転三転しながら徐々に真実が解き明かされていきます。
その意表を突く展開はあまりにも衝撃的で、よく練られた脚本が最後まで程良い緊張感を与えてくれました。
徐々に明らかになるに連れ、クレールの心の奥底に眠る悲しみや欲望がじわじわと滲み出てきて、複雑な気持ちになるも、共感はできないし痛々しく思えます。
ただ人間は皆何かしらの欲があり、誰にでも彼女と同じ状況に陥る可能性があるかもしれません。
恋に心躍らせる表情、大人の女性らしい艶やかな表情、憔悴し疲れ切った表情、駅でアレックスをじっと見つめる表情、その時々の心理状態を表情で見せるビノシュの演技はさすがの安定感。
主役に隠れあまり目立たないものの、ピュアな心を持つも架空の女性に翻弄されるアレックスを演じた、フランソワ・シビルもなかなかの好演。
ラストは、意味深なカットで終わり観客に委ねられますが、最後まで惑わせ続けられる秀悦なサスペンス作品でした。