<概説>
リュミエール兄弟の『工場の出口』から一世紀。
驚異的な映像技術の発展の裏側で、映画文化を支えてきた音響技術。普段スポットライトの当てられないその裏側を、一流映画作家達が愛情込めて開陳していく意欲的ドキュメンタリ。
<感想>
ここ十年の映画音響の代表的なものといえば?
この答えは様々でしょうが、私は正直然程強烈なものは記憶に挙がりません。精々挙げるとしたら"Inception Sound Effect"くらいのものでしょうか。
映画音響の歴史的偉業なんてのはぶっちゃけた話、1977年『スター・ウォーズ』や1993年『ジュラシック・パーク』まででやり尽くした印象が個人的にあります。
ですから、ええ、本作が若年層ウケするのか疑問でした。
そして結論。
これはウケない。
だからこそ好き。
まず『JAZZ SINGER』だの『Sing in the Rain』だのの古典を外さないところからして好感が持てます。技術革新は最先端ばかり持て囃されるものですが、そこにはキチンと過去の技術がある。
この古典技術の偉大さは映画を深掘りすればするだけ痛感するもので、そこに触れる触れないだけで説得力に雲泥の差が生まれましょう。
また作品として「爆音音響サイコー!」と言っている訳ではないのもいいですね。『エレファント・マン』のような静寂との対比を重視する作品も"音響"としていますから。
" I'm a human being!! "
静謐な作品空気の中、絞り出された台詞に感動した人間として、これ程嬉しいこともありません。
とはいえやはり『映画音楽の世界』と比較すると、大衆ウケは悪い気がします。
別にMARVELだDisneyだ、そうした純エンターテイメント作品群の名シーンを礼賛している訳でもありませんし。映画音響というだけあってややマニアックな題材でしたね。