こたつむり

ようこそ映画音響の世界へのこたつむりのレビュー・感想・評価

ようこそ映画音響の世界へ(2019年製作の映画)
-
♪ 遠くで聞こえる風のファンファーレが
  いつかこの胸に響いて

本作で取り扱っている題材は映画音響。
つまり、曲だけでも素材だけでもなく。
録音やアフレコ、ミキシングにも言及したドキュメンタリー。なかなかマニアックです。

確かに映画にとって音は重要なピース。
違和感なく作品に溶け込んでいると聞き流しますが、その裏の苦労は並大抵ではありません。

しかも、奥が深いんですよね。
音の特性によって、どの周波数を削るのか盛るのか、全体の調和を考えながら素材を作り込み、更には配置した後で調整しないといけないので、絶対的な解答が存在しないのです。

それに考えてみれば。
視覚情報に頼った画像や文章と違って“時間”を包有する素材。作り込むのに時間が掛かるのも当然です(5分の曲を把握するためには、最低限でも5分必要)。その苦労の割には評価が低い分野です。

ただ、一般人に分からなくても。
映画を統括する監督さんは評価しているわけで。そんな彼ら(特にジョン・ラセター)のメッセージには思わず口角が上がりました。

お金もかなり掛けているのでしょう。
邦画で台詞が聞き取りづらい作品がありますけど、それと比較すれば“違い”は歴然。地味だけど細かい積み重ねがクオリティを左右する…それがよく分かりました。

あと、音で大切なのは空気。
「空気の振動=音」ですから、空気の質によって音は変化します。その空気(風)は音の邪魔もするし、臨場感も高めるわけで(電子音がペラペラなのは空気に頼らないから)目に見えないけど奥が深いのです。

それと個人的に驚いたのは、未だにアフレコを用いていること。確かに波形化して処理が出来る現代ならば、アフレコの方が効率的ですよね。いやはや、本当に足元で映画を支えているのだな、と認識を改めました。

まあ、そんなわけで。
映画を更に楽しむ調味料のような作品。
鑑賞後は違った角度で映画を捉えることができそうです。

こうなると違う分野も観てみたいですね。
『ようこそロケハンの世界へ』とか『タイムキーパーの世界へ』とか…。さすがにマニアック過ぎますかね。