あしたか

涼宮ハルヒの消失のあしたかのレビュー・感想・評価

涼宮ハルヒの消失(2010年製作の映画)
4.7
[再鑑賞]


[あらすじ]
クリスマスが間近に迫った冬のある日。キョンは後ろの席にいるはずのハルヒがいないことに気付く。さらに驚くべきことに、その席に座っていたのは、なんと…!(Netflixより)

アニメ映画を飛び越えて、SFというくくりでもトップレベルの面白さを誇る秀作。


[見所]
●実写映画のような間をとった撮り方
⇒原作を丁寧に映像化したからというのもあるが、"間"が多いのが特徴ということもあってアニメ映画には珍しい長尺。だがそれが功を奏して、独特の世界観にどっぷりとハマることが出来る。
実写映画のような間のとり方には思わずゾクゾクッとしてしまう場面も多々あり。タメが上手な映画。

●とにかく脚本が面白い
⇒ハルヒを全く知らない人でもいきなりハマってしまうような吸引力抜群の冒頭に始まり、SF好きなら垂涎もののサスペンスフルな展開がノンストップで最後の最後まで展開される。絶望的な状況でも決して諦めないキョンの、藁にもすがるような行動の数々には手に汗握る。観客の思いつくことを全てやってくれるのが熱い。
こんなにも観客が翻弄される物語はアニメでも実写でもそう見ることはない。個人的には『バタフライ・エフェクト』や『オーロラの彼方へ』と並び称したいと思う程面白い。

●長門有希の魅力
⇒元々好きだった人もそうでなかった人も、彼女の魅力に打たれること請け合い。孤独な宇宙人が何を抱えSOS団で過ごしてきたか…それが明かされる終盤のシーンでは痛く感激した。キョンと長門の絶大な信頼関係には羨望を覚える。

●浮き彫りになるSOS団の心
⇒出番は少ないがハルヒと古泉には要注目。キョンがいないと2人はこうなってしまうのか…と考えるとキョンの存在意義がよくわかる。古泉の「羨ましいですね…」には鳥肌。

●キョンの述懐
⇒ほとんどの台詞がキョンの語りだと言ってもいいくらいキョン尽くしの本作だが、個人的ベストシーンとしても終盤のキョンの述懐シーンを挙げたい。あの感動的な一連の長台詞を聞いて、この作品は紛れもない"青春映画"だと確信した。ここには若者の抱く孤独や焦燥が凝縮されていた。
作画面からもわかる気合いの入りようで、間違いなく作り手が一番気合を入れたシーンがここだとわかり、絶大な感動を覚える。

●演出力
⇒優れた演出力で全てのシーンを楽しく見ることができるが、特に凄いのが入部届けとしおりが持つメッセージ。この2つの象徴的なアイテムに込められた作品のテーマが素晴らしい。
キョンがこの2つのどちらかを選ぶシーンでは、余りにも切ない幕切れに涙が出そうになった


「アニメ?ハルヒ?興味無い」という人ですら一気に引きずり込むだけのパワーに満ち溢れている。SFや青春物語が好きなら外せない1本。
あしたか

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