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涼宮ハルヒの消失のTrainのレビュー・感想・評価

涼宮ハルヒの消失(2010年製作の映画)
4.9
この劇場版公開からもう11年になろうとしてるのか。やはり『涼宮ハルヒの憂鬱』はライトノベル、アニメの前に歴としたSF作品だと思う。何度見返しても色褪せない面白さ。涼宮ハルヒはヘタすれば宇宙を崩壊しかねない力を持ちつつも当の本人は全くそのことに気づかない。「非日常的なことが起きて欲しい」という彼女の内なる思いが宇宙人、未来人、超能力者を意図せず一つの部室に集めるが彼女は彼らの正体を知らない。いかにもヤバい人間だが主人公は彼女ではなくキョンという何の力もないただの平凡な高校生。『偶々』ハルヒの前の席になって話に付き合ったのがきっかけに気に入られ「世界を大いに盛り上げる為の涼宮ハルヒの団」、訳してSOS団の設立に強引に協力させられ、渋々団員の一人になる。そこから彼を狙うもう一人の宇宙人が現れたり、超常現象だったり現実にはあり得ない事件が立て続けに起こる…

今作は原作の中でも人気のエピソードでタイトル通りハルヒが消えてしまう話だが彼女がヒロインではなく、無表情の読書少女「宇宙人」長門有希(ながと ゆき)に主に焦点が当たる。何者かに改変された世界の彼女は感情が顔に出るがシャイな性格が邪魔をして無表情の時と変わらずあまり多くを語らない。ここで京アニ十八番の繊細な心情描写が見られる。ちょっとした表情や手の揺れ動き、顔を見せなさったりと意図的ではあるが自然に見える計算された演出。特に自動改札機の前でキョンのブレザーの袖を摘む有希のシーンは素晴らしい。また終盤の病院の屋上でキョンが有希と話している場面。キョンが「ユキ…」と呟いた瞬間に雪が降り始め、同時に俯いていた有希が顔を上げる。これは原作にはないオリジナル要素。台本を見るとその台詞はカタカナで書かれていて長門有希のことなのか雪のことなのかは分からない。キョンが長門を下の名前で呼んだとして呼ばれた彼女は嬉しかったのか。真相は全く分からない。こういうニクイ演出があるからもっと京アニが好きになる。物語自体はTVシリーズのハチャメチャ感と違ってゆったりしていてメインではないものの「未来人」朝比奈さんや「超能力者」小泉のキャラも掘り下げる構成になっている。アニメ映画としては異例の2時間45分と長尺だが各キャラの掘り下げのことを考えれば必要な時間だし、そんなことを考えなくても時間を忘れるくらい没入できちゃう。

思えばハルヒは自分がライトノベルを読んだりアニメを見るきっかけの一つだった。ラノベは本屋に行っても無くて中古屋で全巻揃えたのはいい思い出。未だに京アニによる3期を望んでるし、原作も二年生編を読みたいと思ってる。原作に関しては短編集ではあるが先月ようやく出たし希望はまだある。多分死ぬまで諦めないだろう。そういえば初の聖地巡礼もハルヒだったな。「原点にして頂点」というフレーズがこれほど合う作品なんて滅多にない。俺はここにいるぞ、ハルヒ。ずっと待ってる。
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