タマル

ゲームチェンジャー: スポーツ栄養学の真実のタマルのレビュー・感想・評価

4.0
私も一時期ダイエットに打ち込んでいた時期があった。
ダイエットを成功させるためには筋肉量を増やすことである。脂肪を維持するためのカロリーよりも低いカロリーで維持できるため、暴食を防げる。脂肪が減り筋肉が増えるほど腹が減らなくなるわけだ。
そのために、筋肉の修復にエネルギーを用いて、脂肪を維持するためのエネルギーを残さないように、エネルギー源を摂取する。つまる所、痩せるためにはどれだけ運動しようが関係なく、「何を摂取しないか」を正しく選択することが肝要となる。
この時、炭水化物抜きダイエットなどは愚策である。人体にとって糖は必須であるし、糖の不足は筋肉量を低下させる。つまり、糖不足は逆に太る。
最も制限すべきは脂質である。脂質は端的に言って、人体に微塵も貢献しない。脂質は摂らなくとも全く問題のないゴミであり、それでいて、摂らずにいることがなかなか難しい養分である。だからこそ、2〜3食の間にいかに脂質を摂らずに腹を満たすのかということがダイエットの最大の課題である。

さて、本題はここからだ。
脂肪を減らすためには、炭水化物ではなく脂質を抜くことだとわかった。でほ、筋肉は? 筋肉は何を食べれば増えるのか。もちろん、答えはタンパク質である。
たんぱく質には二種類ある。植物性タンパク質と動物性タンパク質である。私が見たホームページにはこの二種の違いがこのように説明されていた。

「植物性のたんぱく質は筋肉を引き締めスリムな体型を作り出す。動物性たんぱく質は筋肉を膨らませパワフルな体型を作る。前者は瞬発力、後者は重いものを動かす際に有効な筋肉である」

これを見た私は、アホみたくささみ肉を食い散らかし、低脂肪乳を飲み散らかした。しかし、これは大きな間違いであった、と本作を見てはっきりとわかってしまった。そりゃそうである。なんで動物性たんぱく質と植物性たんぱく質でつく筋肉に違いが出るんだ。おかしいだろ。同じアミノ酸なのに。要するに、「バランスのいい食事」などという特に内容もない神話を根拠に「肉も大事、野菜も大事」ということを表現を変えて説得的に言ってみただけなのだ。そして、そんな与太話を疑問もなく受け入れてしまう程度には私たちの肉食→マッスル信仰は根深い。

本作をヴィーガンのすゝめと捉えるべきではない。私たちの肉食信仰によって、ヴィーガンの隣人を攻撃しないための啓蒙作品である。菜食主義者にそれで大丈夫かと問う前に、我々のような食事のスタイルを心配するところから菜食主義者が生まれていることに気づかなければならない。まともなコミュニーケーションはつまる所、その地点を通過したところからしか始められないのだ。

ということで素晴らしい映画である。このレビューは本作をおすすめするために書いたものであるから、私のダイエットがどうなったかなどということは本当にどうでもいいことである。新しい価値観に触れる良い契機となるに違いないので、ぜひ鑑賞してみて頂きたいものである。
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