だい

ようこそ、革命シネマへ/木々について語ること ~ トーキング・アバウト・ツリーズのだいのレビュー・感想・評価

3.3
1989年のクーデターで誕生した軍事独裁政権の下、映画の上映が実質的に禁止されたスーダンで、
再び映画文化を復興させようと奮闘する元映画監督たちを追ったドキュメンタリー。

ネタバレ覚悟で書くけどさ、
これ、邦題で勘違いしそうなんだけど、
無事映画館を復活させました!やったね!
ってハッピーな話ではないです。

ハッピーエンドを期待して観ると傷つくから言っておかねば。

結果的に、国の政治的判断で許可が下りず、
映画館を復活させられなかった話なのね。

つまりスーダンという国の闇の部分を描いた社会派ドキュメンタリー。

ぼくはそっちのほうが好きなので面白かったけど、
そのへんのマッチングは大事。



「スーダン」で「映画」って全く印象にないよな、って思ったら、
そりゃそうよな、禁止されてるんなら。

そんな中でも、断片的に過去のスーダン映画が流されるのマジ貴重。
保存されてるフィルム、デジタル修復して復刻してほしい。

で、
出演してる元映画監督たち、
映画が撮りたいとか以前に、純粋に映画ってものが好きなんだろうなあ、って。

冒頭、サンセット大通りのグロリア・スワンソンの真似をするシーン。
いくら名作とは言っても、あんな古い映画の台詞を暗唱できるとか、
もはやただの映画オタクじゃん。

小規模な巡回野外映画館では、
チャップリンのモダン・タイムスを上映して、
古い資料の中から出てきたVHSの山に、
「トリュフォーだ!」「ブニュエルじゃん!」って興奮して。

映画好きなんてみんな一緒やな。


そんな映画好きが、
映画の楽しさを住民たちに知ってもらおうってイベント、
それすらも何だかんだ理由つけて許可されない国。
かなしいね。


30年続いたバシール実質独裁政権が2019年末に崩壊したスーダンで、
いま彼らはどうしているかな。
国体が変わって、スーダンに映画の灯はもう一回灯るのかな。

20年後、30年後、
スーダンの若手監督の映画が日本で上映されたりしたら、俺たぶん泣くわ。
彼らが必死に繋ごうとする文化の糸、
大事だよな。
だい

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