垂直落下式サミング

SHINOBIの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

SHINOBI(2005年製作の映画)
3.0
漫画版の『バジリスク』でよく知られている山田風太郎の『甲賀忍法帖』の映画化。登場人物の配置に原作との差異が目立つのは何ともだが、クールジャパンなヴィジュアル系なので海外ウケは良かったりする。
原作だと筑摩小四郎と夜叉丸にあたる武闘派ふたりの忍法合戦は、地形や自身の技の特性を活かした攻防になっていて、なかなか迫力があり実写アクションとして成功していた。
他にも、薬師寺天膳に最も信頼をおく部下であった室賀豹馬の首をはねられる様を、眼前にてまざまざと見せ付けられた弦之介が、この旅に朧も同行していることを確認してしまう場面の演出などエモーショナルで素晴らしかったと思う。
でも、やっぱり正面から堂々と攻撃を仕掛ける肉弾戦闘しか見所がないのは残念。『甲賀忍法帖』は、如何にして戦いを自分の得意な領域に持ち込むかということを常に競っていて、情報戦で優位に立ったとみるや否や突如としてアンブッシュを仕掛けるなどといった具合に、繰り出させる技はハチャメチャなんだけど人物たちが徹底した合理性にしたがって行動しているのが特徴なので、初見のわからん殺しやハメ技系エロ殺法など、舐めプが即死亡に繋がるような非肉体派たちの忍術勝負も見せてほしかったな。
甲賀忍法帖にフェアプレーなんか望んでない。死人に口無しという言葉があるくらいで、卑怯だろうがルール違反だろうが何だろうが、相手を皆殺しにして勝ってしまえば後で何とでも言い訳できるのだから、弱いやつからさっさとぶち殺していくべきだ。
このあたり、地虫十兵衛の言った「この隠し技を敵に知られては俺も百年目じゃが、知った時には相手が百年目じゃ」という言葉に象徴されるように、読者に奥義をみせた奴から物語上の役目を失い順当に死んでゆくという良い意味で出し惜しみをしない原作の非情さを再確認した。
そこそこ誉めたつもりだけど、地虫たんが出なかったので評価低め。合法芋虫キャラなんて珍しいんだから、すぐ天膳に殺されていいので実写化してほしい。