カルダモン

汝のウサギを知れのカルダモンのレビュー・感想・評価

汝のウサギを知れ(1972年製作の映画)
4.1
日本未公開&未ソフト化だったブライアン・デ・パルマのデビュー作。本邦初公開ということで楽しみにしていたのですが、なかなか皮肉に満ちたコメディ映画でとっても面白かった。

企業の成功者が、自分の人生に嫌気がさしてドロップアウト。自分らしく生きる為に選んだ道はタップダンスマジシャン!(なんだそりゃ)マジシャンスクールで稽古をつけてくれるのはオーソン・ウェルズ。
主人公があまりウケないウサギの手品で人生を謳歌している一方、かつて勤めていた企業はウサギを使ったタップダンスマジックの会社へと方向転換し、右肩上がりの成長を見せる。自分らしく生きる為に始めた仕事が企業に飲み込まれていくこの皮肉。
主人公は再びドロップアウトする。


色々ツッコミどころが渋滞しまくるのだが、あまり深く考える必要もなく、登場人物の無防備で開けっ広げな感じがユルユルでたまらない気持ちにさせる。特にキャサリン・ロスが誰にもウケていないマジックに一人だけキャーキャー盛り上がってるのが最高に可愛い。
ところどころ話が飛んでるのはデ・パルマが編集から外されたことが理由らしく、強引に90分サイズにされた上にエンディングも改変されるという仕打ちを受けて、いわゆる黒歴史になってしまったのだそうな。なんとも不憫な映画ですが、最高に愉快な映画でした。


ここ数日に観た映画が『バグダッドカフェ』『道』といった旅と芸に関するものだったので、この映画も並べてみると味わい深い。