キツネとタユタム

すばらしき世界のキツネとタユタムのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.7
刑務所より出所した元殺人犯が、社会に適合しようと悪戦苦闘する物語。

生まれ持った環境とそれにより培ってきた性格は生半端な気持ちじゃ変わることは無いというのを体感できる作品。三つ子の魂百までとはよく言われるが、幼少期の生活習慣って大事だなと感じる。
人によって善悪の境界線は様々なんだけど、社会の一般思想から大きく外れてしまうとハブられて、変人や厄介者の扱いを受ける。どんなコミュニティでもそうなんだろうとは思うけど、思想が合わない人と一緒にいるのって結構大変だなと改めて思わされる。

流石役所広司と思える演技と存在感は素晴らしい。
ほんとにヤバい人のように思える。黒沢清監督とタッグを組むときの役所広司はどこか客観的な目線を持っていて見えない怖さを醸し出していたが、本作にもその怖さを感じた。
笑っているのに目の奥は笑っていないような迫力。
仲野太賀の演技も凄まじいものがあった。仲野太賀といえば泣きの演技だと思うけど、今回も健在。そこの印象が強すぎて、一番記憶に残っているのがそのシーンになったかも知れないくらい凄い。必見。

日本という国ならではの生きづらさや、生活保護の現実。
その中にある、人間同士の温かみ。現実はもっとつらいのかもしれないけども、どんな人間だろうと生きることへの希望があるのだということを教えてくれる至高の一本。
キツネとタユタム

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