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すばらしき世界のmilfakのネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

タイトルが痛烈な批判にも見えてくる、、

鑑賞中にずっと脳内をぐるぐるしていたのは、“自助・互助・共助・公助” “再起不能社会”などの言葉だった。反社勢力が安定,幸せを掴みづらい世の中は『ヤクザと家族』でも描かれていたがこの作品はちょっと違う。カタギとして生きようとする三上の生きづらさが痛烈に描かれる。焼肉屋で語った長澤まさみのセリフが端的で、観終わった後に思い出さずにはいられなかった。
真っ直ぐ生き過ぎている、もっと良い加減になりなさい、と周囲は三上に話したけれど、それってやっぱり人によってはかなり難しい。正義を振り翳しているに過ぎないと言われればそれまでだが、その身勝手に振り翳した正義により救われる人間もきっといる。それに自分が悪とするものを見過ごした側は、“見過ごした”事実を抱えて生きなければならない。
社会制度としてのセーフティーネットは、個人が本当に必要なところまでは及ばず、その他の力を借りずにはいられないとすると、それは社会として果たして“成立している”として良いのか?
様々な後味を残してくれる良作だった。

ストーリーとして、元妻の久美子さんから連絡があったり、協力的な環境があったりして何とか就職まで出来た辺り、仲野太賀のナレーションで入った5年以内にムショ戻りするという統計と比べると三上は恵まれていたと思う。
自分に対してだけでなく他人に対しても、過去は過去と分類して、今生きている誰かと向き合うこと、と心に強く刻んだ。

あと坂本九の上を向いて歩こう、定期的に聴こう
すばらしき世界

p.s. 言わずもがな役者陣の安定感たるや
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