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すばらしき世界のRIOのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.2
上質。そして、繊細。

三上は殺人犯だし、暴力性をもってるんだけど、彼は決して善悪があるわけではなく、直感的な感情でしか動けない、極端に不器用な男なんですよね。

暴力性の象徴であるヤクザという存在そのものを排除しようとする、
その行為をモラルだと謳う現代社会は、
あまりにもシビアだし、

嫌なことでも我慢して辛抱することが人間性だという社会論は果たして正義なのかと。

彼は「空白」の添田と同じく、0か100かでしか行動できない人間だから、その社会に適応しきれないのは当然なんだけど、

実際、社会にある物事っていうのは、
白黒はっきりつけれない複雑なものの方が多くて、簡単に決めつけれるものではない。


しかし、
今の社会は暴力性というものの2面性をまったく見ようとはしないし、

複雑であるべき人間性を単純に記号化してしまってる。

そして、モラルという無敵の壁をつくり、あぶれた者は容赦なく切り捨て、排除する。

その人がどんな辛い過去を持っていたとしても、”関わっちゃいけない人”として、レッテルを貼り、袋叩きにする。

それが現代のネット社会の醜い現状なのだ。


それを知った上で、あなたはそんな世界を素晴らしいと言えますか?

確かに逃げることも1つの手だけれど、
弱者を見捨てることが、社会が求める人間性だと思いますか?

そう訴えかけられてる気がして、終始胸をぐっと掴まれているような気持ちだった。


キャストの演技は皆素晴らしいし、三上のキャラクター性はなんとも愛くるしくて魅力がある👍

「空白」とは違い、コメディ部分も多く、シリアスとのバランスも良い。

そんで、なんと言っても、周りのみんなが優しすぎ!笑

「空白」観た後だったから、余計に心温まっちゃったよ。


優しさがあったおかげで、人間らしく生きることができて良かったねと思う反面、

本当に人間らしい生き方って、
現代社会が排除したがる人間性そのものなんじゃないかとも思う。

今僕らが生きる意味、生きるための生き方を問われるような、
そんな”素晴らしき”作品でした🙏


ストーリー  ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
演技     ★★★★★
映像     ★★★★☆
演出     ★★★★☆
音楽     ★★★★☆
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