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プリンス・オブ・エジプトのMASHのレビュー・感想・評価

プリンス・オブ・エジプト(1998年製作の映画)
3.5
旧約聖書の内容をあのドリームワークスがアニメーション化した本作。内容が内容だけに一見アニメには向いていない様に見えるが、4年という長い歳月をかけて作られたこの作品は、旧約聖書を美しいアニメーションで見事に表現している。

もちろん子供も観ることのできる作品ではあるが、子供向けの作品とは思えないほどの繊細なアニメーション映画だ。モーセの悩む姿やラメセスとの関係を丁寧に描いており、一つの人間ドラマとしてもよくできているため引き込まれる。特に中盤のモーセに対するラメセスの愛や悲しみ、怒りの入り混じった表情はアニメ映画とは思えないほどの繊細さがある。シリアスな内容を誠実に描いているのが観ていて伝わるため、観ているこちらも真剣になるのだ。

またこの映画は視覚的にも私たちを魅了してくる。2DアニメーションとCGが見事に調和している。時代が時代だけあってCG自体はあまりできがいいわけではないが、必要最低限のCGは2Dアニメーションの良さを引き立たせている。特に"神"がモーセに語りかけるシーンのアニメーションは素晴らしいの一言だ。神という存在を具体的に描くのではなく、抽象的かつそこにいるという実感を湧かせるような映像。ほんの5分にも満たないシーンだが魅了されてしまった。

ここまでべた褒めしてはいるものの、正直頂けない部分もあった。それはこの映画がミュージカル仕立てであることだ。これほどまでに真剣に描かれている映画に歌うことはは最早蛇足でしかない。劇中で流れる音楽自体はいいだけに残念だ。アカデミー賞で歌曲賞を受賞しているものの、個人的にはほとんど印象に残らなかった。

またこれは映画の出来自体には関係ないが、聖書にあまり馴染みがないとやや退屈にも思える部分もある。これは私の教養のなさの問題ではあるが…

聖書に馴染みのない日本人にとってはやや退屈に思えてしまうかもしれない。だが、素晴らしいアニメーションと誠実な描き方により、唯一無二の映画になっているといえるだろう。

こんなに褒めといてスコアが3.5なのは単にストーリーが好みじゃなかっただけ(聖書の内容にこんなことを言うのは怒られそうだが)。映画としてはすごくいいと思うよ…
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