harunoma17

弥生、三月-君を愛した30年-のharunoma17のレビュー・感想・評価

4.7
時間の中で愛は夢見る

序盤は上手すぎるショットの連鎖と、演出もカメラも素晴らしかった。
アバンタイトルまでトップスピードで見せ、高潔なる波瑠の教室での啖呵と意志は、体の軸がぶれないその走りのように凛々しく、目を見張る。1+2の主題が途中まであるが、残された者たちのカップルのすれ違いは、あまりにも長すぎ、時系列の混在は、そのままエピソードとなり、もはや老けメイクが機能しない説話の限界を暴露し、呪われた歌謡曲や声が、悲劇を延長していた。成田凌は大嫌いだったが、この役はそのまま軽薄な役だったのでよかったが、これくらいだろう。全体はあまりにもダウナーな展開であるが、リアルかもしれない、ホークス度は高校まで。よく見ると10代の本当の高校生エキストラの中に、波瑠と成田凌はいるわけで、語の意味で正統な映画のフィクションになっている。後半の波瑠を観ると、映画は役の設定ではなく彼女のドキュメント。

波瑠は女優として立派であった。ただひとり時代を背負っているその情動は、この失敗作にはもったいない。同じマチネの終わりにであれば、どんなによかっただろう。
ラストは、黄泉の国にいるかのようにとんでも映画となる。
あの丘の大樹は西部劇の神話のようである。

偉大なる失敗作と呼べるのかはわからないが、東宝、電通なるものたちの製作で、ここまでとんでもない作品になったのなら、その心意気は買うべき。
唯一無二。糸よりこっち。

まだ映画の主演の少ない波瑠ファンとしてはベスト。波瑠は歌う。
この声を聴けただけで4.7。

打ちのめされ悲鳴をあげる身体という点では、この歌詞はあってはいるが、前奏がスマホの着信音というキッチュさと、企画の30年というくくりの中で、新しい家族の創出というものができないのは歯痒く、むしろこどもはいるべきだったと思う。
しかし、小さな星の 小さな光が から始まる歌唱は、波瑠の顔によって、それが今、選ばれてあることに感動をする。
そして空隙としていつまでも機能する死者というものは、生きている者の神ではなく、ここには抗う力を得るべき信仰の力はなく、物語は頼りない。日本という時代を離れて、もっとでたらめな力を持ってきてもよかった。波瑠も成田凌も応えられただろう。物語それ自体を支持することはない。

劇場で観るべきでした。