ねこたす

第七の封印のねこたすのレビュー・感想・評価

第七の封印(1956年製作の映画)
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フードを被った顔面蒼白の死神のビジュアルイメージがあまりにも有名ながら、あまり映画そのものを見た人は多くないのではないだろうか。
自分も、「野いちご」と「ファニーとアレクサンデル」の2本を見ただけだった。TSUTAYAが最近HDリマスターのレンタルをやっているので、ありがたく借りてきた。
「野いちご」の旅する中で人と出会っていく物語展開と、「ファニーとアレクサンデル」での信仰への揺らぎのように通ずるところがありそうだ。

海辺で倒れている男に、「死がやってきたよ~~、死んで♪」みたいな軽さで訪れる死神。それに対し、騎士のアントニウス・ブロックは「ちょっと待って、チェスしようチェス! 勝ったら殺さないで!」と勝負を持ちかける。
もうこの冒頭の掴みでこの映画好きだな~って思える。

教会では、神様はどうして自分の前に姿を現さないか疑問に思う。実存的な問いだろうか。死神のことはしっかり視認し、会話しているところがなんとも皮肉。彼が最初に身にまとっていた服には、胸に大きく十字があしらわれ、どうやら十字軍に参加した騎士と思われる。聖地を取り戻すという大義名分を背負った戦いから帰ってきた彼には、どのような心境の変化があったのだろうか。
また、教会の絵には、お互いにムチで叩き合うキリスト教徒や、ペストに恐怖する人々が描かれる。

道中では、旅芸人やキリスト教徒の行進。異端によって火あぶりにされようとする女性や、妻に浮気された鍛冶屋等個性豊かな面々が登場する。特に、楽し気な旅芸人の歌が、後からやってきたキリスト教徒の集団の歌声にかき消されるのは面白い。

そんな世の中の事象に振り回される人々と対照的に、旅芸人との関わりでは空が綺麗に晴れ、野イチゴを食べ和やかな雰囲気がある。歌う彼らをバックに、チェスの続きをする二人もまた、絵的に映えるのだ。

個人的には、従者ヨンスのキャラクターにとても惹かれた。正義感を感じるような行動をする面がありながら、浮気した妻の言い訳を、どうせこんな台詞を言うんでしょ?と先走りこちらを笑わせようとする。

そんな奇妙な旅も、終わりが近づく。一転空が荒れ、ジョン・フォード映画のような印象的な厚い雲。ついには旅の仲間にも死神が見えるようになり、彼らの舞踏で物語に幕が下りる。

決してエンタメの映画ではないが、いかにもヨーロッパという映画だし、このような映画を観て育った多くの監督達が非ハリウッド的な映画を作り続けてきたんだなあとこの作品を観て実感できた。