【生者の後退、死者の前進】
北欧の巨匠イングマール・ベルイマン監督の代表作の一つ。1956年制作。
〈あらすじ〉
十字軍から生還した騎士アントニウスは、帰途、死神と出会いチェスの勝負を行なう。騎士が勝てば、死を見逃すというのだが...。
タイトルは、黙示録に記された世界の終末を示す7つの徴(しるし)から採られたもの。
〈所感〉
やたら敷居の高いイメージの北欧の要塞ベルイマン監督作品初鑑賞。言葉にするのが申し訳ないくらい重厚にして自由闊達。洗練された寓話的ストーリーに、調和の取れた画。どんな人生を送ればこんな映画撮ろうと思うのだろうか。冒頭から本作の象徴的な騎士と死神のチェスが繰り広げられる。YouTubeに投稿するとしたら【いきなり現れた死神とチェスして時間を稼いでみた】というサムネだろうか。死は貴方の常に隣にいるという当たり前だが恐ろしい描写による暗示。退廃的なデカダンス、中世的なカオスに彩られた中にも同行者を通じて、当時の人々のエロスやユーモアへの希求も窺える。使徒ヨハネが幻の中で神から見聞きしたヨハネの黙示録によると、小羊(キリスト)が解く七つの封印の内、始めの四つの封印が解かれた時にヨハネの黙示録の四騎士(支配、戦争、飢餓、死)が厄災をもたらすという。土着信仰も根強い北欧の地で、当時はそういったキリスト教信仰の言説がリアリティを帯び信憑性を増し、人々は混乱の最中にあったはずだ。度重なる戦乱、疫病の流行などに疲れ果てた騎士アントニウスに仮託して、ベルイマン自身が「この世に神はいるのか?」と問うているようである。実際に牧師の息子として生まれたベルイマンにとって神の在・不在は死活問題だったのだろう。アントニウスは死ぬまでの猶予で地上に神の顕現を見ようとする。しかし、結末はあの死者の行進である。あの戦いは全くの無意味だったのだろうか。はい、ナンセンスであります。人生とは虚無である。語るに落ちない。
驚くほどの傑作。でも、もっと経験を積まないと、いや恐らく死ぬその寸前までこの映画を完全に理解するのは不可能だろう。あれ?もうチェックメイト?参りました🙏