半兵衛

トルブナヤの家の半兵衛のレビュー・感想・評価

トルブナヤの家(1928年製作の映画)
4.2
ずいぶん前にフィルムセンターで大笑いしながら鑑賞してから久方ぶりに見直したのだが、ボリス・バルネット監督のずば抜けた演出センスと笑いのツボを押さえた巧みな演出によって見事に製作されたコメディ映画の傑作であることを再確認した。

冒頭をはじめ舞台となるマンションで様々な登場人物が上や下で色んなことをしている描写をあるときはワンカットで表現して、あるときにはモンタージュで仕上げたりと変幻自在な演出でまるで漫画やアニメを楽しんでいるような気分になってきて気分が上がってくる。またスローモーション、早送りといった技術も良いところで使われていてハイセンスな喜劇に仕上がっている。まさかこの時代に「時を戻そう…」というネタを使う監督がいるとは。

田舎からモスクワに出てきた主人公の少女が、あれよあれよというまに選挙で評議会のメンバーに選ばれるという展開はいかにもソ連当局のPR映画といった作りだけれど、監督の演出とテンポのよさでそんな宣伝気分をふっとばし主人公が予想だにしない意外な人生を迎えるコメディとして楽しめる。

中盤のお芝居を見に来たお客さんの期待が高まる心情を楽しそうな顔や凄まじい勢いの足踏みで見事に表現しており、見てるこちらもワクワクしてくる。そこから舞台の出来事を本当のことだと勘違いして主人公が劇に割り込んでお客さんが興奮してしまい彼女が舞台の主人公みたいになってしまう展開が勢いとテンポも相まって笑い転げてしまった。

ラストは行き先のない主人公をこき使っていた男が共産党に処罰されるといういかにも共産主義礼賛みたいなオチだけれど、その男の反応が変+秋野太作に似ているので笑えてくる。
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