HicK

コンフィデンスマンJP プリンセス編のHicKのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

《今作は感情移入次第》

【今作最大の魅力?】
「ダー子たちが標的を騙す」以上にトンデモ展開を駆使して『作者がダー子たちを使い観客を騙す』というシリーズの醍醐味は健在だったが、今作は前作に比べ割とストレートに進んでいったなという印象。それもコックリの成長を素直に見せたいという意図からかもしれない。そこが今作の最大の見所なのだが、個人的には最大のネックになってしまった。

【親子は無理がある 笑】
んー、結論から言うと、コックリを小学校高学年または中学生ぐらいにして欲しかった。どう見てもダー子とは親子には見えず、姉妹もしくは、そのまま師弟関係にしか見えなかった。もちろん姉妹や師弟の絆として見ても素敵だなとは思ったが、親子の絆となると、果たしてそこまでの描写があったかなと思ってしまう。

これがもし長澤まさみと小学生の子供だったら、変に深掘りした描写が無くとも本物の親子に見えて回想シーンでは素直に涙していたかも知れない。残念ながら自分には「嘘をつき続ければ真実」という母娘関係の魔法がかからなかった。とは言え、コックリ役の関水渚の「あごをプルプルさせて泣く」シーンにはつられ泣きしそうになった。あのシーンは演技では無いリアルな表情に思えて、心を動かされた。

【他に】
「一族を守るためなら手段を選ばない」とするトニー。もし彼の「"過去の"手段を選ばなかった行動」と「それを知ってるダー子」の描写があれば、最後の彼の行動に納得し、ダー子の先手にも「うまい!」と思ったかもしれない。

第二幕のボールルームシーンからは、複線のために意味の分からない断片的なカットが何度か挿入されるので、ストーリーに没入しずらかったかな。あからさま過ぎて。そこからのラストの種明かしも前作のインパクトと比べると物足りなくも感じた。

【前作を越えたもの】
前作越えは見終わった後の「ほっこり感」「温かさ」だと思う。今回は前作以上に登場人物一人一人の結末が温かい。メインのコックリとダー子たちはもちろんのこと、フウ一族の本当の自分に戻った描写も清々しい。その他にもジェシーのK-POPオチ、デヴィ夫人やホテルの支配人、赤星、スタア、レイモンドとダー子たちのラストシーン、全てのキャラクターにほっこりした。

そこに畳み掛けるOfficial髭男dismの「laughter」。清々しい気分で劇場を後にできた。まさに大円団。海外の開放感あふれる風景やブルーに統一された今作の爽やかなイメージカラー、心が穏やかになるストーリーはコロナ禍の今にふさわしい。

【演技】
今回もコメディアンヌ・長澤まさみは素晴らしい。そして、特に今作はビビアン・スーが良かった。嫌味な女からラストシーンの青春映画さながらの爽やかな演技まで、全てが輝いていた。ちなみに個人的なツボだったのが前田敦子。あんな感じに振り切れた役の方が輝く女優なのかもしれない。

一方、東出昌大の演技はいつまでたっても慣れない。ボクちゃんの「素人っぽい大根役者の演技」って、多分ベテランでも難しい。それを演技力が比較的低めと感じる東出がするのにはやはり無理がある。もうそろそろ見慣れてもいいはずなのだが…。

【総括】
今作は前作と比べてしまうと、ドンデン返しによる興奮度合いは少し下がった印象だが、心情回帰のストーリーでダー子とコックリの関係に感情移入が出来れば、また違った角度のツイストに魅力を感じれると思う。最後はファンタジーを見たかのように温かく清々しい充実感があった。
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