Machiko

コンフィデンスマンJP プリンセス編のMachikoのレビュー・感想・評価

4.0
いわゆるコンゲーム的な面白さ、清々しいまでに騙された……という感覚は前作の「ロマンス編」に軍配が上がる。が、本作は観客のエモーショナルな部分をこれでもかと擽ってくる。「騙されに」来た観客には当然まさかの不意打ちで……泣けたねえ。

コンフィデンスマンJPの劇場版二作を一言でまとめるなら、「ロマンス編は心よりギミック、プリンセス編はギミックより心」だろうか。ジェシーとダー子の間に実は心がなかった「ロマンス編」と、ダー子やコックリが誰かのために心を割いた「プリンセス編」と。どちらも面白く、どちらも好きだ。

今作はほんと、人が誰かの為に心を尽くす映画だったなと。ダー子とコックリもそうだけど、コックリとあのおじさんがね。ダー子達の計画がいかに完璧でも、爆発が起きてたら皆死んでいた。イレギュラーな事態を収めたのは詐欺の腕でも何でもなくて、ただ人を思う気持ち。心が、ギミックを超克した瞬間。

もちろんダー子とコックリの関係描写も素晴らしかった。ダー子、めちゃくちゃ自然に肩に手を添え、抱きしめ。で、「ありがとうお母さん」よ。本物も偽物もない、信じればそれが真実、というのは本作のキャッチコピーだが、あの数ヶ月、二人は真実の親子だったんじゃないかと思ったり。

さすが人気シリーズなだけありテンポも良く楽しさも上々、情報を的確なタイミング・的確な手段で観客に提示する手腕は本当にさすが。役者陣も実力あるビッグネーム揃いなだけあり、普通有り得ないシチュエーションに巧く独自の世界観を融合することで、しっかりリアリティを持たせていた。

で、一際光っていたのが今作のキーパーソンを演じた関水渚。「町田くんの世界」で女優デビューした彼女だが、髪型も役の年齢も当時とほぼ変わらないのに、声の出し方から表情から仕草からまるで別人! 新人故に色がついておらず、役のピュアさに説得力があったのも良い。彼女はきっと大成する。推し。

そうそう、心といえば当主とその子供達の関係も良かったんよなあ。それぞれの本当の夢や向き不向きを見抜いて相応しい道へと導くという。あの手紙は偽物だけど、香港でダー子の背中叩いたってことは……そういう事でしょ? 

ほんと、詐欺師の映画で、あえて心を描くってのが粋すぎてね。いいモン観た。

あと、白濱亜嵐さんがゲイの役として出てるんだけど、そこをバカみたいに笑いのネタにせず、どころか彼はゲイですという過剰・無用な説明もせず、あくまで人間の多様性としてこういう人ですよと出しているのがすごく好感度高かった。時代、進んでるなと思った。
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