ニシカ

花束みたいな恋をしたのニシカのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
3.9

"その夏、シン・ゴジラが公開されても、ゴールデンカムイの八巻が出ても、新海誠が突如ポスト宮崎駿になっても、渋谷パルコが閉店しても、わたしたちの就活は続いた"


東京を拠点とした文化系カップルがここ5年間のポップカルチャーを滲ませながら、出会いから別れを描くんだから、そりゃドラマ勢だけでなく映画を観るセグメント層にも刺さるわけだし、「ほぼウチの本棚じゃん」なセリフでアレやソレが映り込むわで、もうまんまと楽しまされちゃった、。


ドラマや映画でそれぞれヒット作&話題作を連発してきた監督 土井裕泰・脚本 坂元裕二が手掛けるゆえ、よりたくさんの人々に響くように作品を創る力に長けた2人が携わっている以上はクオリティが安定してるのは観る前から想像は出来たのですが、2人ともベテランの50歳台、、。はたしておっさんが現在20代の若き男女による5年間の恋愛が描けるのかと思いましたが、世間の反応からもアーリー平成生まれの感情にもしっかりぶっ刺さる作品に仕上がっていたみたいです。それは主演の2人、菅田将暉 有村架純による現代を投影する存在感と演者としての巧みさによるところも大きいでしょう。脇を固める役者達もテレビ的でなくやや映画よりの配役にしていたりと微調整も上手いです。


小説にマンガ、映画や音楽にテレビや舞台と趣味嗜好が合う学生の麦と絹。明大前の終電絡みで出逢い恋に落ちた2人はやがて社会人になり仕事と生活持続がそれぞれの気持ちの在り方を変えていく。

ドラマ的な分かり易さと映画的な語彙と構成に2人の日常を想像させる作り込みの丁寧さが恋愛の醍醐味を思いださせ、在りし日の記憶をやわらかく刺激する。苦くもそれぞれに希望のあるラストシークエンスがこの映画のタイトルすらも見事に表現していて素敵です。


オイラも有村架純に「ほぼウチの本棚じゃん」って言われたい人生だった。
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