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花束みたいな恋をしたのうさぎのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
3.8
常に2人の生活が映し出される本作は
ただそこにある日常のリアルなのにどこか眩しく輝いていて、青春と人生が描かれていた。

1番印象的だったのは
「始まりは終わりの始まり」という言葉。
すごくわかる。
恋の絶頂だと思った瞬間に
別れへのカウントダウンが始まっているかのよう。
幸せなはずなのに、不安と恐怖で押しつぶされる。
その中で一緒に過ごしていくのならばやっぱり今を大事にして積み重ねていくしかないんだと思う。
この映画で2人の幸せな日常にはインスタとかTwitterとかは出てこなかった。
そのことに、SNSで着飾るよりも2人が幸せな時間そのものをちゃんと大事にしていたんだなと感じた。

あんなにもお互いの趣味が合って、
共通の話題があって、価値観が合って
そんな人に出会えるなんて奇跡のようなことで
でもそんな運命のような2人でさえ、永遠に一緒にいることが叶わないこと、そんなことってある?
でもこの物語が進んでいくにつれて
2人が直面した現実を見ると
きっと別れを選択することが正解なんだと思ってしまう。

恋愛と結婚が別だというなら
人は何のために恋をするのだろうか。
恋愛の延長線上に結婚があってほしいと願うのは
きっと間違っていることではないと思う。
でも、それが100%叶う現実世界では
まだないということ。


菅田将暉くんの麦
目を輝かせて「現状維持」を目標にしていたあの頃も、社会に溶け込んでいってしまった後も、
別れようと決意したのに目の前の絹を失う恐怖から足掻こうとする姿も表情に引き込まれる。
恋人としての最後のハグは、きっと麦も別れることが最善だと心では分かっていたのだと思う。
そして麦が就職してから結局一度も描かなかった絵。
絹ちゃんも好きだと言ったあの絵を
未来ではもう一度、描いていてほしいなあ。

有村架純ちゃんの絹
とにかくかわいい。
麦には批判されてしまった自分の好きなことを大切にする姿は理想なのかもしれないけど、
逆に最後のファミレスで恋愛感情のない結婚を拒む絹を見ていて、こういう時、女の方が現実をしっかりと見ているなと思う。若い男女の会話が昔の自分たちのようで、耐えきれず外に走り出して号泣する姿はこちらも見ていてたまらなくなった。

この映画を通して
男性は麦の生き方に共感し、
女性は絹の生き方に共感する部分が多いのかもしれない。

そしてたくさん考えさせられる。
恋愛の難しさ、出逢い、結婚、別れ、全てのタイミング、社会で生きるということ。
理想と現実の狭間で、2人がだんだんとすれ違っていく。見ているものが真逆になっていく様を見せつけられた。

ただ、この作品を見て思うのは
最初の出会いから最後の別れまで、
麦と絹の日々は間違いなく
飾る場所を無事に見つけた
「花束みたいな恋」であったということ。
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