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花束みたいな恋をしたのおのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.7
 この映画のタイトル「花束みたいな恋をした」の花束の意味。いつか枯れて色褪せるかもしれないけれど、花言葉みたいな一生忘れない言葉を包んで相手に手渡し合った恋って事かなぁと考えさせられた。

 一言で言うと伏線回収が綺麗で、場面の切り取り方が鋭利すぎない作品。
 イヤホンのLとR。親が言った「責任」と麦くんの言った「責任」。玄関に並んだスニーカーと革靴・ヒール。ファミレスの2人と似た男女2人。社会のいわゆる偉い人と今村夏子さんのピクニック読んでも何も感じない人。2人で引っ張るカーテンと畳むカーテン。最後の最後に焼きそばパンを分け合う2人とGoogleマップ。
 会話の端々にある麦くんと絹ちゃんにしか分からないサブカルや言葉の数々が2人だけの閉鎖的関係性や空気感を如実に表していた。

 その中で1番心に突き刺さったのは「じゃあ」って言葉。
 この言葉って言っている本人は優しさとか寄り添いの気持ちで言ってるのかもしれないけれど言われた側は本当に傷つくよなぁと。あなたはイヤイヤ付き合ってくれてるんかと。それって今一緒にいてもお互い本当に意味あることなんかと。この言葉が放たれた時点で2人の溝がかなり深くなっていったと思う。
 あと時間に追われる日々の中で2人の優先順位がズレてきたのも悲しかった。最近は私も好きな小説よりもビジネス書とか新書ばかり読んでいるなぁと麦くんを見ていて痛感した。絹ちゃんの好きなら好きな事すれば良いじゃんの価値観ももちろん持ってるから、うーん、どっちの気持ちも分かる。だからこそ恋愛も結婚もお互いの優先順位を握り合ってる事が必要だと思うし、同じ趣味嗜好の人を愛するんじゃなくて別の趣味嗜好を持っていても一緒にいたいと思える人を愛せたら幸せなんじゃないかと思った。
 ファミレスで自分達と似た男女2人を見てもう元には戻れないと気づいた2人を観て涙目になった。

 終電逃して漫喫行ったり押しボタン信号押し忘れてたりリクルートスーツで歩き回って絆創膏付けてたり趣味語り倒したりする姿に謎の共感の嵐が吹き荒れた。「電車に揺られる」の言葉も猫にバロンと名づけるセンスも好きだった。

 ただ①カフェでのあり得ん再会②大学生なのにあり得ん過程でフリーターに③予告編で流れてた「勿忘」が全然流れない、の−0.3で4.7/5.0評価だが、ごく普通の飾らない邦画ラブストーリーとしてはトップクラスだと思った。恋人と見ることを私はおすすめしたい。それで別れるならそれまでの人。
 (昔独特なクセのある高校教諭が「現象維持は退化のはじまりだっ!」って言っていたのをふと思い出しました。)

#👐
P.S. 鑑賞後、互いの印象的な場面やセリフは全然違えど、これからもずっと仲良くしたいの気持ちは一緒でよかったです。幸。
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