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花束みたいな恋をしたのakihiko810のレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
3.7
CSで視聴。坂元裕二脚本。

好きな音楽や映画がほとんど同じで、あっという間に恋に落ちた麦と絹は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店してもスマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けるが──。

押井守をお互い知っていたことが縁で付き合った男女。サブカル趣味が合い楽しい時間を過ごす。麦は就職したことを機に、優先順位がサブカルから仕事へと変わり、二人の間に溝ができ初め…。という話。

サブカル好きにはぶっ刺さるチョイス、ということで話題になっていた本作。二人がすきな作家を紹介しあうシーンで、「うわー、あるある!」と共感性羞恥心がわいてしまった。自己紹介での「俺のセンスは、<わかってる人>」感を出しつつ、鼻持ちならない程度の絶妙なチョイスをやってくるのがいやらしい(苦笑)。たしかにこれは「サブカルクソ野郎」的な自意識を持っていた身としてはぶっ刺さる。

が、映画作品それ自体の出来としては、「上の下」程度の出来か。普通よりは少しいい、くらいの恋愛ストーリーだった。
坂元裕二脚本なので、たしかにホンはうまいのだが、どちらかというとドラマサイズなスケールでしかないのが残念だった。

この映画は作品の内容を語るよりも、自分語りをした方がいい作品だと思うので、自分語りをしてみる。
作中に出てくるような恋愛なんて全くできなかったのだが、自分もサブカル自意識を拗らせた文化系人間なので、共感はできる。何より「話の分かってる」人と出会って話すと楽しいし、サブカルに興味ない「話のわからない」人に対して軽く失望し見下しちゃう感じとかもあるあるだ(本作ではその「わかってない奴を見下す感じ」があまり出てなかったのだが、大体のサブカルはこういう人は見下してくるぞ 苦笑)。
そしてサブカルが好きであることを仕事にしようとして挫折したり、そんなのが好きでも何の役に立たない、それで食っていけるのかと散々言われるのも多くのサブカルが体験することだろうし、麦のように就職して仕事で疲れて感性が摩耗し、「パズドラしかできない」ってのもあるあるだろう。私は絹のように「好きなことしかしない」選択をしたのだけども。
就職して生活のステージが変わったことで、サブカル感性が摩耗し「席活を営む」ために働くことを社会では「大人」と呼び、大抵の人がそうなっていくわけだが、あくまでそれは「すれ違い」なだけであって、絹が麦を「つまらない大人になったね」と見下したり、逆に麦が絹を「いつまで学生気分なんだよ」と相手を見下し「断罪」し合わないところはよかった(単にすれ違いとして描いていた)。当然ながら、人には人のステージがあるというだけで、そこに優劣をつけないところに共感を持てた。

本作にたどり着くくらい映画好きな人なら、サブカル好きな人(というか、自意識を拗らせたことある人)だろうから「これ俺じゃん」と学生時代の麦絹の振る舞いがぶっ刺さるはずなので、見てみることをお勧めしたい。というか、俺も押井守好き女子と付き合いたいぞ
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