なるほど。
これは面白い！
映画を鑑賞するって、これまで観てきた映画なり読んできた小説なりによって人それぞれの頭の中で話型の分類ができ上がっていて、それと照らしながら観る、みたいなことをするじゃないですか。で、ああ、これどっかで観たことあんなぁとか、こんなの初めて……とかなるんだけど、特にそういう品定めが鋭角に出やすいのはホラー映画だと思うんですね。
なぜって、怖いから。
怖いを和らげるために、なんとか目の前に起きつつあることを、既知に回収しようとする。だから、怖がりさんとホラー観ると、一々先読みを声に出して安心しようとするじゃないですか。ホラー好きであっても、恐怖を感じると全神経が研ぎ澄まされて、これまでの知見を総動員しながら観るところがある。要するにこの反応は、本能のレベルだと思う。
だからホラーの作り手は、そうした鑑賞者の心理の先を行くことにおのれの手腕のすべてを賭けるはずだし、そういう意味では、ホラーって非常に知的な映画であるわけだ。
ちゃんと既知を踏襲しながらね、鑑賞者の先読みをちょっとずつミスリードする、の、この「ちょっとずつ」が、本作は絶妙なんですね。鑑賞者を置いてけぼりにしない。しないながら、要所要所できちんと欺いていく。オセロのような、チェスのような展開なんですね。
どうだ！ って作り手が我を剥き出しにしない、decent な作り込みも好ましいですね。ドローンの撮影も活きています。セリフを切り詰めて、映像に語らせるタイプの監督さんです。
clever な映画でした。
