Masato

バッド・エデュケーションのMasatoのレビュー・感想・評価

バッド・エデュケーション(2019年製作の映画)
4.3

卒業生を超有名大学へと導き、教育に定評のあったロズリン学区。その教育長タソーン博士(ヒュー・ジャックマン)と教育長補佐のパメラ(アリソンジャネイ)の莫大な着服がなんとも奇妙なキッカケで暴かれていく実話を基にしたコメディドラマ。

いつの間に日本にきてた。いつも劇場公開以外だと情報見逃すから、もっとアナウンスしてほしい。

ものすごく淡々としたコメディドラマだが、実にスマートで小気味よく楽しめる作品だった。着服をしてしまう二人の悪人とは言い切れない複雑な内面を描くとともに、ジャーナリズムを描いていて、とても内容としては満足。

タイトルが絶妙な皮肉で、自らが良い教育をしてきたが故に、ジャーナリズムに長けた優秀な生徒に暴かれていくという、着服した側から見れば、都合の悪い「悪い教育」であるというこのタイトルが最高に良い。タイトルで作品のテイストなどもわかるから、本当に絶妙。というか、物凄く適当なタイトル。

(何度も言うけど、)ジャーナリズムを描いたことが本当に良かった。自分がただ好きなだけなのだけれど、スポットライトやペンタゴンペーパーズに通ずる本質的なテーマ性が語られる。不正を暴くことで巻き添え的に罪の無い者まで影響を与えてしまう。それはどうしても避けられない。教育長の不正を暴けば、学区の教育に影響を与え、進学先にも大きく響く。その被害を被るのは、何も知らない生徒たち。タソーン博士はそれを「爆弾の爆発」と例える。
しかし、それでも不正を暴く。生徒なりに葛藤し、正義を貫く様を描いていて、とても泣かせる。本作の主人公は学校新聞のあの子だったのでは。HBOらしさのあるテーマ性だった。

また、キャストの演技が素晴らしく、なんと言ってもヒュー様とアリソンジャネイのベテラン二人の演技はとてつもない。特にヒュー・ジャックマン。
最初は何もかもスマートでインテリで話術にも長けていて、おまけにイケメン。完璧とも思える姿が、だんだんと化けの皮が剥がれるように徐々に険しくなっていく様が表情や仕草ひとつで分かる。映画の作風はコメディなのに、ヒュー様の演技がすごすぎて、演技だけでスリラーやホラーのようにも感じてしまうくらいの怖さを感じ取れたのが凄い。これが演技の力かと思わせられた。顔のアップも多く、そこの微細な表情の移り変わりも印象的。やはりすごい。
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