ウスバカゲソウ

すべてが変わった日のウスバカゲソウのレビュー・感想・評価

すべてが変わった日(2020年製作の映画)
4.0
近過去を舞台にした西部劇。
テイラー・シェリダン以前の、ハリウッド西部劇最後の砦たるケビン・コスナー印の手堅さ。
「拾い物」的前評判に違わぬ佳作だった。

モンタナやノースダコタの美しくも荒涼とした世界。
街中のダイナー。
寂れたモーテルのネオン。
恐ろしいポツンと一軒家。
ロケーションや美術の素晴らしさ。
突発的な暴力。
毒親による暴力的支配構造。
みんな大好きジェフェリー・ドノヴァンの嫌な感じと不憫さ。
犠牲になる子供、女性。
現代と地続きの居心地の悪さ。
先住民への残酷な虐待。
文化、精神の抹殺。
西部劇でも古く感じないのはシェリダンと同様のアプローチだからか。

ジャンル映画的な盛り上げを排除し(いくらでもできそうなのに!)、あくまで抑制の効いた演出。
達者な俳優陣のお陰で退屈を感じることもない。
冒頭の展開がちょっと分かり辛いが。
省略するには重要な話のような。
ただ、他者との相互理解、あるいは敵対の話でもあるので、「分かり辛さ」も大事な要素か。

台詞に頼らず画で語る。
人物の所作や適度なカットバック。
とてもエモい。
不満がないわけではないが、予想以上に良かった。