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ダーティハリーのcatmanのレビュー・感想・評価

ダーティハリー(1971年製作の映画)
5.0
先ずオープニングからして全く隙が無い。殉職警官の記念碑とオーバーラップするライフルの銃口、と同時に鳴り出す緊迫感あふれる不穏なサウンドトラック。鮮やかなスカイブルーのプールに鮮血が広がる衝撃的な狙撃シーンから一転、レイバンのサングラスを掛けたハリー・キャラハンがドアを開けて初登場する流れの見事さよ。ラロ・シフリンのスリリングなジャズファンクがこの映画のクールネスを更に際立たせる。

今回久しぶりに見返して改めて印象に残ったのが随所で効果的に聞こえてくる様々なSE。例えば件のオープニングではハリーがボールペンで空薬莢をすくい上げる音、歩く際にジリッジリッと革靴が細かな砂利を噛む音、冒頭からしばらくセリフが全く無いだけに余計にこれらの音が臨場感を増幅する。

イーストウッドとアンディ・ロビンソンの魅力はもはや言わずもがな、その他のキャスティングでは上司役のハリー・ガーディノが印象的。イーストウッドのいつもの『やれやれ』と言うユーモラスな顔芸と同じ様にガーディノが弱り目に見せる表情は中間管理職という立場の悲哀と苛立ちを感じさせる名演技。

俯瞰や煽り、ロングショットそして夜間撮影を織り交ぜながらサンフランシスコの街並を見せるカメラも素晴らしい。さすが名手ブルース・サーティース。さらに本作は衣装も◎で、ヘリンボーンのツイードジャケットにエルボーパッチを付けて、バーガンディのベストと組み合わせたセンス半端ない。

クライムサスペンスの金字塔。反権威主義のアンチヒーロー刑事映画の先駆け。シーゲル&イーストウッドコンビの最高傑作。シリーズ化された2作目以降は蛇足じゃない?って思えるほどクオリティが突出している。
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