Akira

愛しの母国のAkiraのネタバレレビュー・内容・結末

愛しの母国(2019年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

 70周年の祝賀ムード真っ盛りの国慶節に、中国本土で鑑賞しました。
「ただのプロパガンダ」と、切り捨てるも我々の自由ですが、やはり「中華人民共和国」の歴史観を知る上では欠かせない映画ですね。

 個人的には『相遇』と題された、中国初の原子爆弾実験成功の話です。唯一無二の被爆国と冠する日本人からすれば、ありえない脚本が設定されているでしょう。しかし、その物語を見れば、戦後史を第三世界としてサヴァイブした中華人民共和国の物語が見えてきます。
『北京你好』2008年の北京オリンピックの話が一番ほっこりとしましたね。こういう素朴な労働者の話が挿入されていること、そして「回到那一天」の曲調が映画にピッタリでした。葛優の好演がまた良い。

 一方で誠に残念だったのが、チェン・カイコ―が監督した『白昼流星』。内蒙古の自然を背景に、困窮する兄弟と、彼を導く叔父?の逸話が始まったかと思いきや突然のロケット着陸…。扱った題材自体にそこまでの感動が生まれるのかどうか…という疑問もありますが、期待していただけに肩透かしを食らったような…

 興味深かったのが、香港返還を描いた『回帰』。
公開当時も、香港では暴動の真っ最中かと思いますが、内地ではほとんど報道もされず、ただの暴徒扱いでしたね。その最中に迎えた「建国70周年」という大イベントです。中国人(内地)がいかに香港返還を屈辱の歴史からの脱却と称賛する一方で、香港ではその中国(共産党?)を罵倒するという顛末ですね。現実とスクリーン上のギャップを知る外国人としては不思議な気持ちでした。
 余計な話ですが、この「回帰」は劇中でも手放しに称賛し喜びに満ち溢れた描写からも、ある種、香港へのメッセージを感じます。しかし、逆の視点から見ると、この「建国70周年」という国家の威信をかけた大イベントに香港は真っ向から唾を吐きつけたと、本土人の目からは映るのかもしれません。
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