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カモン カモンのAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.0
結局、人と人はわかり合えないのじゃないか、人間は孤独な存在何だという諦観。
それでも、だからこそ、分かろうとする振る舞いが、コミュニケーションの第一歩。

その前提をしっかり踏まえた上で、
人の話に耳を傾ける事/インタビューの美しさ・尊さを本作は映し出す。
(あれは実際にアメリカ各地の子達にインタビューした映像らしい。
インタビューする際の繊細な、ケア心に満ちた振る舞いに安心する。
唐突にマイクを向けることの暴力性に自覚的だという証左。)

それだけでなく、妹ヴィヴの夫のメンタルヘルス、認知症の母親の介護などなど、人生のままならなさ、困難さもしっかり切り取っている。その上での生の肯定という作風。

ミクロの視点(ジョニーが目の前のジョシーとの対話)とマクロの視点(子供達へのインタビューから浮き上がる社会問題)の対比、
物語とフェイクドキュメンタリー(あのインタビューは本物?)の織り交ぜ方が秀逸。

モノクロで切り取るアメリカ各都市の景色。がさり気なくも素晴らしい。
パレードの場面、年齢も人種もジェンダーもバラバラな人達が、同じ場に集い、楽しむことの尊さ。アメリカ文化への祝福とも取れる印象的なシーン。

「なんで録音の仕事が好きなの?」という9歳のジェシーからの質問に
「録音は永遠に残るから。平凡なものに価値を与えるってクールだろ」叔父ジョニー(ホアキン・フェニックス)は答える。

本作はマイク・ミルズが未来に託した《永遠に残したい》希望。
ヨーロッパの東端で血が流れている今、一層重く響いてくる。
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