藍紺

カモン カモンの藍紺のレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
3.9
ひと癖ある独身中年男と風変わりで大人びた少年の組み合わせはわりとよく見る。この作品も最終的に大人側が子供に感化されるというステレオタイプの着地に落ち着くのかなと思ってたけど、マイク・ミルズ監督らしい視点で、ありがちな映画にはなってないとこは流石だった。
相手と分かりあえなくても向かいあい、その言葉に耳を傾けること。それが大事なことと分かっても、時には向かいあいたくない日だってある。今日は勘弁してくれって時がある。しかし子育ては待ったなし。たった一人、自分がなんとかしなきゃならない絶望感たるや!!劇中、「僕は大丈夫じゃない!!!!!」って主人公ホアキン・フェニックスが訴えるシーン、あれは心情が伝わりすぎて身につまされた。理解することが大事なんじゃなくて、僕はあなたを理解したいと思い続ける諦めない姿勢が重要。葛藤しながら完璧な大人じゃなくても、わけがわからなくても、それでも逃げず前に進む。マイク・ミルズが実際に子供と接した経験からこの作品が生まれたとのことだけど、身近な題材をとても丁寧に描いている。彼は真摯な人なのだろうな。
ヴォネガットの「愛は負けても、親切は勝つ」という言葉が私は大好きなのだが、この映画を観てその言葉がふと浮かんだ。
主人公の甥ジェシーを演じるウディ・ノーマン君。演技が自然で上手すぎてびっくりするw 目線の外し方とか動作とかがこなれすぎてて、どこまでが演技なのか脱帽。次回作とかめちゃくちゃ楽しみ!
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