垂直落下式サミング

カモン カモンの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.0
『ベルファスト』の白黒のガキは、そこそこ育ちのいいエエトコの子なのにあんま好きじゃなかったけど、コイツはそこそこのクソガキなのに可愛いね。クソガキだからかわいいのかな。どうだろう?
妹の子供を預かることになったラジオジャーナリストのホアキン・フェニックス。いろんな場所に赴いて子供たちにインタビューしている。こういった役柄は子供嫌いと相場は決まっているが、この主人公は職業柄ふつうに子供好きおじさん。障壁が低くて助かる。
「録音する」という行為のなかに、しっかりした意味付けを求めるとすれば、手にした人間のこころに比例してチューニング調節されているかのようなマイクも重要なファクター。やかましいくらい音を拾う。音とは生きているあかし。この感度。感受性そのものではないか。聞こえること、聴こえること、聞き取ること、それについて理解すること、あるいは考えること。まずは、君のおはなしを聞かせて。伝わらなくても、話そうよ。
ずーっと誰かと喋ってる。疲れるけど、続けなくちゃ。伝えたい、わかりたい、そういう気持ちを失っちゃいけない。子供の陰謀論も似非科学も。まずは聞いてあげたい。
両親が厄介きわまりない問題を手一杯に抱えて、子供の相手ができないでいるとき、現実問題として、縦とか横とかの密な血縁じゃなく、斜め上のうっすら繋がった程度な人物との関係が大事になってくる。家族からはなれて別の人間と生活を共有することは、場合によっては予想以上に有意義なものになり得る。子供にとっても、保護者にとっても。
叔父さん、甥っ子、このお気楽な関係のたった数日をもって、これを子育て擬似体験だなんて未婚が思い上がるほど、ものを知らないわけじゃないけど、やっぱ可愛いもんなんだ。なんかしらの気休めにでもなってくれればいいな。また来いよ、クソガキ。