かんち

ミッドナイトスワンのかんちのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
5.0
母性と贈与、無償の愛の話だと思った。
人間は与えることで初めて、心からの充足を感じられるんだろうな。
一見こちらが与えているようで、実はそれよりももっともっと、かけがえのないものを還してもらっている。

海のシーンの凪沙の顔とか見てると、本当そうなんだろうなと想像できた。
底のない絶望と、表裏一体の幸福。
愛する人が、自分なんか比にならないほど美しく羽ばたいていく誇らしさの一方で、
憧れたその姿を追い求めるスタートラインにすら、自分は永遠に立てない。
一果を引き上げることで救っていた、自分自身の魂が終わっていく。

だけど、その混濁の向こうで、最後に凪沙を包んだのは、絶望ではなく幸福だったと信じたくなる。凪沙の一果への愛情はそれほどまでのものだったと思う。

「他者へ与える準備が出来ている人」ではなく「自分のことで手一杯な人(薬飲みながらボロボロ泣くあたり)」でも、与え、守り、愛することで、どんどん満たされていった。

自分が満たされていないと他者を満たせないかと思っていたけど、必ずしもそうではないということだと思えた。順番は逆でもいい。

「愛された経験が無い人は、自分の理解を超えた愛を示されたときに拒絶してしまう」という話(今原とサイコで話した)が、凪沙が就職したときの一果の反応と重なった。あの激昂を受け止めた凪沙がすごい。

与えられた愛を信じる、受け止めるって、簡単なようでとても難しい。
それを理解して、愛情を受け止められない相手ごと受け止めるの、本当に究極の愛だと思う。

自分もここまで深く誰かを愛せるようになりたいと思わせてもらった。