たた

ミッドナイトスワンのたたのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
3.8
「人生は過酷である。故に美しい」
って全然関係ない映画のコピーを思い出しました。
重たくてしんど過ぎる映画。

全体的にきれいな絵なのに、ショッキングな展開や痛々しいリアリティに何だか背筋がぴりぴりする。

あらすじ
ショーパブでダンサー&ホステスとして、男性だけど心は女性として、ひっそりと暮らしているなぎささん。虐待されて心を閉ざしている親戚の子を預かることになり、最初は疎ましく思っていたものの、バレエに目覚め打ち込む姿を見てやがて応援するように。
擬似親子関係の中で芽生える母性と絆。
ハートウォーミングムービーのあらすじかと思いきや、待ち受ける苛酷な現実…。

僕自身の周りには性的マイノリティな人は顕在してませんが、うちの奥さんとそのゲイ友さんによると、実体験と重なり過ぎるところがあって苦しいほど突き刺さったらしく、この映画はリアルであるあるで草剪くんの役作りや佇まいがとても良かったようです。
「ムーンライト」は洋画なこともありファンタジー過ぎてポイだそうです。

バッドエンドじゃなくてビターエンド、だと思うのですが、悲劇にする必要あったのかなあというのが僕の第一の感想で。「きれい事にしたくなかったんでしょう」という意見にまあ確かにとは思ったものの。

生き辛い世の中で、何とか自分の居場所を見付けて守って踏ん張って、懸命に生きているマイノリティな人達が、希望や夢に出会って輝いていくハッピーなストーリーであって欲しかった。

でもまあ、この映画を作った目的が、マイノリティの共感を得ることではなく、マイノリティの苦悩や惨状を知らない人に痛感させたること、なのかも知れません。
撮影会や風俗店で一線を越えさせないのは脚本の優しさなのか、ある意味リアリティなのか。

こういった人達がみな差別や偏見に苦しんでるなんてことも、偏見は良くないって考え自体も、ひとつの偏見だと思いたい。悩みや苦しみを抱えていても、おおむねハッピーに暮らしているんだと思いたい。

中学生の二人が素晴らしかった!
いちかの繊細な仕草と表情。バレエの技術は(多分)ほんもの。話が進むに連れて少しずつ少ーしずつ心を開いて成長していく様子の表現に脱帽です。彼女の魅力半分、もう半分は魅力を引き出した監督の技量、という印象。

りん、上手に感じたのはこっちのほう。バレエに打ち込んでいる顔、両親に見せる顔、撮影会でのアイドル顔、いちかにだけは見せたい本当の自分、絶望と希望と決意の羽ばたき、どれも同じりん。演じるのは難しかったと思う。すごい。
たた

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