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ミッドナイトスワンのremishimaのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

1990年代の映画と言われれば納得するが、2020年の映画ではないと思いたい

どうしたって同時期に公開中の『82年生まれ、キム・ジヨン』と比べてしまう

これは映画『キム・ジヨンの旦那』が撮ったようにしかみえない
※キム・ジヨンの旦那:亭主関白な風土が根強い地方の出身だが『理解しようととてもがんばっている、良い人。』『でも端から見ればまだまだ理解が及んでいない、当事者に寄り添うことができていないひと』

どちらも『社会へ訴えかける』『淡々とみせていく』映画であるけれど、キム・ジヨンの方は日常の中にあるしんどさに丁寧に向き合い、あくまで日常の中にある出来事のなかでも『ひどくない方』に焦点をあてることで、『こんなことと思うかもしれない、これも、これにも、つらいと声をあげていいんだよ』と寄り添う姿勢がある。(それゆえに日常の地獄みをより感じ、個人ではどうしようもない、社会へ声をあげるべきだという意識に繋がっていると思う)
ミッドナイト・スワンは日常の、よりセンセーショナルで注目を浴びるシーンにフォーカスされている。
センセーショナルでないと、という思いの余り、あり得ないはだけかたをするし(その伏線がらんま1/2なのかと思うとハ???となるし、そもそも何でどういう気持ちで凪沙はらんまばっかり読んでるんだ)
そういう雑な感じのノリで一果はその年にしてあり得ない重荷ばかり背負ってゆく
それであのエンディングである。
なんなのか。

俳優陣の演技は本当にとても素晴らしくて魅入ってしまう。小説版には何故ここを削除したのかという良いシーンも出てくるのに、ことごとくチョイスが『キム・ジヨンの旦那』的で、そしてこれが日本の現状だと地獄みを感じる。

草彅剛さんの演技はとても素晴らしいけれど、『LGBTQの友人はいない』し、監督もLGBTQ当事者ではないそうだ。

それは決して悪いことではないけれど、そこが90年代っぽさの要因だと思う。
この作品は『日本で生まれるべきだった映画』だと思う
でも余りに現代的な作品に感じられない。

『82年生まれ、キム・ジヨン』のように、当事者視点を持った女性監督が、原作からさらに一回り大きな意味で社会に対する意識を向けさせてくれる作品。
ボーイズインザバンドやTHE POSEのように作品のテーマに寄り添う製作陣で作られた映画、ドラマ。
アマプラの『THE BOYS』のようにジェンダー問題やポリコレを更に次のフェーズで扱うドラマ作品。

どれも今日本で観られる。
だからこそ日本の現状をつきつけられるようなこの『ミッドナイトスワン』という作品に複雑な思いが募る。

早く日本でも当事者が直接演じ、製作できる規模のお金がこういった作品に集まれば良いのになと思う。
その一歩には確実になっている映画だなと思います。

とても複雑な映画体験でした
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