サイコサスペンスかと思って借りたが、予想だにしない、重いヒューマンドラマだった。
容疑者、環菜の生育環境が気の毒でならない。
年頃に差し掛かりはしたものの、まだ子供である年齢の時に、あんな目にあわされ、頼った母親も精神不安で頼りにならず、追い詰められ、縋った先でも、また傷つけられ、彼女に対する周りの無理解、無関心。訳ありな娘に向けられる猥雑な視線。
正直、あの映画を観ている間、男性の性と言うものに対する嫌悪感がずっと渦巻いていた。
向こうは軽い気持ちであっても、女性側に深い傷を遺す。もしこれがうちの娘に起きた事だとしたらと思うと、おぞましすぎて、本気で吐き気を覚えた。お互いのそれに対する気持ちの乖離が、光年レベルで距離がある。
そして、それを紐解く側の臨床心理士、由紀もまた、思春期に心に深いキズを負わされていた。何故、由紀の母親はあんな事を言ったのか。母親もまた、消化しきれない思いを娘に吐露する事で、自分の娘なら解ってくれると言う気持ちだったのかもしれないが、（解決済みになんてなるわけない。あんな気持ちの悪い事実。）それが、娘にとっては最後通告になり、大人になってもなお、苦しめられるトラウマとなり…。しかも、なんであんな時に言う。
告げるタイミングも最悪だ。結局、皆、自分の事ばかりで、弱い者にストレスをぶつけるのだ。
ラストは一筋の光見えるものではあるが、しかし、周囲の者が環菜に対して行った、心の傷害、殺人に関しては、量刑は与えられない。
やりきれない。
