Cavianne

ファーストラヴのCavianneのレビュー・感想・評価

ファーストラヴ(2021年製作の映画)
3.3

心の内にしまい込まれた傷や痛みを探るのは難しい。
逆にその蓋を閉ざしてしまったり、
無理矢理こじ開けて壊してしまったり、
それらを恐れて尻込みしてしまったり。

その心が解かれた瞬間、悔しさと悲しみと安堵の滲む環菜の涙に、
感情がどっと押し寄せてきて、こちらまで心を抉られるような気持ちになった。


幼少期の親というのは絶対で、
親にとってあるべき自分を演じる子供は少なくない。

環菜の母親は、子供を自分自身と重ねてしまったために子供まで否定してしまった訳だが、
その言葉が長く娘を縛り付けている事に気が付きながらも、
本人も夫に抵抗できない被害者の面も持っていた。


周囲の大人が、社会が、子どもを育てる。
植え付けられた基準やルールは、
成長してもなかなか塗り替えることはできない。
どれだけ技術が発展しても、トラウマというものの払拭は困難なままであり、
犯罪を裁くためには、本来閉ざされた心の奥まで読み解く必要があるが、現代技術では調査できる範囲でしか暴くことが出来ない。
隠された大勢の罪が幾重にも重なって、積もり積もった天辺の一部で判決を下すのだ。


芳根京子は本当に表情の作り方が素晴らしい。
美人なのに、不気味さや虚無さや、持った美しさを殺す方法を知っている。
北川景子は常に綺麗。
表情は作り込むけど、目の奥に、何かを含んだ闇を感じさせることは出来ない。
中村倫也はカメレオンと言われているけれど、個人的には飄々淡々とした役が一番で今回も適役。
窪塚洋介はこんな柔らかい役柄を久々に見た気がして、
その姿がぁりにも自然で、こちらこそカメレオンだろう、と思ってしまった。
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