極楽蝶

由宇子の天秤の極楽蝶のレビュー・感想・評価

由宇子の天秤(2020年製作の映画)
5.0
驚きの傑作! 劇場を観る限りは観たい作品ではなかったが、いろいろなところでの評価が高かったので観たが、ビックリした。
主人公でドキュメンタリー監督の由宇子をとおして、人間の知りたいということ(攻撃)と知られたくないこと(防衛)を抉った作品。報道の善悪ということを超えて”人間の本性”に迫った作品だと感じた。
最初の事件である教師と女子高生の自殺の問題だけなら報道の問題を捉えた平凡な作品になっていたであろうが、二つ目の事件である学習塾を営んでいる由宇子の父とその女生徒との淫行が起こることで前例のない作品となった。ドキュメンタリー監督の由宇子は最初の事件では、第三者として真実を暴き出そうとするが、第二の事件では、自身が問題の中に陥ると損得を考えて真実を隠そうとする。これは報道だけではなく”人間そのもの”ではないだろうか。
そして、ラストシーンで由宇子は妊娠をした女生徒の相手が自分の父であると、女生徒の父親に告白したように思えるが、僕はそうでないと思う。由宇子は最後の場面に至っても、父を生贄にしながら、女生徒を追い込んで交通事故の原因となった自分自身は守っている!
春本雄二郎監督、恐るべし!
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