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由宇子の天秤のCOLORofCINEMAのレビュー・感想・評価

由宇子の天秤(2020年製作の映画)
4.5
●拠って立つ「正義」はそもそも脆い。規範がその人自身の見聞きし、体験してきたものの中から生まれているからだ。常に揺れている。それは傍観者である観客も。故に「物語」は映画館を出ても続く。余韻は大きい。
●由宇子(瀧内公美)を横から捉えたショットであきらかなるジャンプカット(アナログレコードで例えると針飛び)。ドキュメンタリー監督である主人公をドキュメンタリー映画のように写す。しかし、これは「映画」なのだ。それに気づかせてくれる(気づかされる)見事なショット。
●人はカメラを向けられるとインタビュー側の期待に応えようとして実際とは違った「人となり」「ことば」で語ってしまう(演じてしまう)。故に真実のドキュメンタリーなどというものは存在しないのでは?(あるいは監督が施す編集によっても)。そうなると隠し撮りで語ってもらったものだけをノー編集で、ただ流すだけが真実?そして、それは果たしてドキュメンタリー映画と呼べるのだろうか?
そういった事柄をも内包させた(二重構造の)本作の語り口は巧妙だと言える。

●パンフレットとシナリオ(撮影稿)にその後が描かれた漫画、幻のラストシーンのことが。特に漫画は少し、ほっとできるかも。
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