SAKUMATHENERD

エルヴィスのSAKUMATHENERDのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
4.1
流石バズ・ラーマンというべきか、ギンギラギンに惜しみ無い外連の塊のような煌びやかな映像美に酔いしれた。

物語もエルヴィスの盛衰だけでなく、実質準主人公であるプロドューサー/トム・クーパー大佐の視点から見物小屋モノ映画としても捉えらるのが興味深い。「人は反応していいのかどうか困惑してしまう背徳感があるものに惹かれてしまう」という彼の持論にピッタリハマった「腰振りダンスをしながら黒人音楽を歌える白人」であるエルヴィスを”最高の見せ物”としてその才能を見出し、彼を使って利益を生み出す。アーティストとしてのクリエイティビティティとビジネスマンとしてのマーケティング思考が衝突することはあれど、なんだかんだ共依存してしまい芸能界の渦に共に溺れていく様子が描かれる。

特に前半の少年エルヴィスが黒人音楽と出会う”スーパーヒーローへ覚醒”する瞬間が衝撃的で教会音楽とR&B『Hound Dog』が共鳴し導かれるかの如くエルビスが協会へ向かい音楽を全身で浴びるまでの流れは映像センスがビンビンでここで食らってしまった。よく黒人音楽であったロックを盗んだと揶揄されるエルヴィスだが、寧ろ当時の黒人からは支持されているように描写されており自分が兼ねてから持っていた先入観は良い意味で覆された。こう言った黒人音楽の文脈を汲んだ今作のサウンドトラックはエルヴィスの楽曲を基調にエミネム(エルヴィスと同じく黒人音楽であるHIPHOPを盗用したと揶揄されることがある。)、ドジャ・キャット、スウェイ・リーなどHIPHOP勢はさることながら、マネキンやテーム・インパラなどのロックアーティストも参加しており、エルヴィスの楽曲の再解釈として中々面白いものになっている。

エルヴィスが始めてクーパーの前でパフォーマンスを披露したシーンも圧巻だった。彼が腰をひねり、股間を突き出し、その歌声を響かせるや否や背徳感に引き摺り込まれるかのように黄色い悲鳴をあげ、下着まで脱ぎエルヴィスへ放り投げだす女性達。只事では無い歴史が変わる瞬間がこれでもかと外連に溢れた強烈な演出で描かれる。劇中でも”禁断の果実”と表現されている通り、一歩間違えればただのギャグになりかねない絶妙なニュアンスを体現したエルヴィスを演じたオースティン・バトラーは只者ではない。オーラ、佇まい、声質・歌唱力、中性的で線が細い容姿含めて彼意外考えられないハマり役だったと思う。どこぞの英米紙でも讃えられていたようにまさにエルヴィスと俳優/オースティン・バトラーという2人のスターが誕生した瞬間だった。

他のユーザーの感想・評価

syunn

syunnの感想・評価

4.0
色々な気持ちあるんですが、ジャクソン5の名前が出てきて「うわっ」となっちゃった。PTA作品ではファントムスレッドとゼアウィルビーブラッド好きです。

同日に見たリコリスピザには、母性の誕生を見ちゃった気持ちです。
06

06の感想・評価

4.2
エルヴィスの事を1ミリも知らずに鑑賞。
──圧倒的!!!

面白いとか通り越してただただ凄い。
ボヘミアン・ラプソディもそうだが、一時代を築いたロックスターの生涯を、ハリウッドがこの時代映画にするという事は、世界に「彼の人生はこうだった」という公式解釈を広める事だと思っている。
それを、見事にやりとげた。

映画のスタートは、
「──エルヴィスの死の理由はなんだったのか?」
から始まる。

その答えを探しながら、エルヴィスのマネージャーであるパーカー大佐の回想という形で物語が進む。

彼がその時代にどんな影響を与えたのか。何故ヒットしたのか。そしてどんな人間だったのか。

音楽に愛された繊細な青年と、商売が上手い詐欺師の物語だった。青年が自分を取り戻そうと藻掻く話でもあり、でも結局彼を苦しめた詐欺師こそが、エルヴィスの成功を作り上げたという話でもあった。

エルヴィスは何故死んだのか。本人の苦しみ、マネージャーとの取引、家族との関係、取り巻き達の散財、多面的にあったであろう理由に、この映画はひとつの結論を出している。──それがすごい。
補足されるテロップもずるい。

エルヴィスの人生を通して、シームレスにアメリカの一時代を駆け抜けた感があった。

エンドロールが終わった後に聞こえるエルヴィスの声に、つい拍手を送りたくなる。
エルヴィスというロックスターを一生涯忘れられなくなる、そんな映画だった。
エルヴィスの予備知識をほぼ入れずにIMAXで鑑賞。
期待していたライブパフォーマンスはまさに圧巻。
50〜70年代のイメージに合った演出、エルヴィスの音楽の根底に流れるブラックミュージック等見ていて全てが心地よく退屈しなかった。
何度でも見たい映画。
ezoe

ezoeの感想・評価

2.0
くどい。
解釈が自己満
金ある大学生が自主映画で作ったみたいな映画。
構成がくそごちゃごちゃしててめまいがする。
ブルースのシーンをもっと聴きたかった。
Miku

Mikuの感想・評価

3.8

このレビューはネタバレを含みます


エルヴィス・プレスリーのことは名前を知ってる程度で、事前情報も何も入れずに観に行ったけどよかったです。

エルヴィスが音楽に心酔していく瞬間
観客たちがエルヴィスに熱狂する瞬間
それぞれ特徴的に描かれていてゾクゾクした。


エルヴィスと大佐の関係も、側からみればえ?は?ってなる要素は山ほどあるのに切れそうで切れなくて。大佐も自分のことしか考えてない悪いやつかと思いきや、エルヴィスへの愛を感じるときもあって…
本人たちにしかわからんのだろうけど、結局はお互いに依存してたんだなと。


それにしてもオースティンバトラーの色気がハンパなかったな〜吹き替えを使わずほぼ自分で演じてたとのことで。

鑑賞後、エルヴィスと大佐の写真と見比べてみたけどオースティンバトラーもトムハンクスもそっくりだった。いや、よく見たら似てはないんだけど同じ人物にしっかり見えるっていう。凄い。

あと、差別とか暗殺とか当時のアメリカに漂う空気みたいなものも描写されていて。
当時のアメリカと比較したら平和で安全ないまの日本で生きる身としては想像したってしきれないけど、今作を観ながら間接的にアメリカにはこういう時代があったということを改めて感じられたのも良かったなと思います。こういう歴史があったことを忘れてはいけない。
エルヴィス知らなくてもテンションが上がる。エルヴィス・プレスリーの伝記映画。

ビートルズやクイーンのように、詳しくなくともなんとなく代表曲が思い浮かぶアーティストと違って、名前や風貌は知ってるけど、いまいちどんな歌を歌ってたのかは全然思い浮かばないエルヴィス・プレスリー。こんなレベルの知識で映画を見ても盛り上がれるのかと心配していたけれど、流石『ムーラン・ルージュ』のバズ・ラーマン監督、音楽シーンの盛り上げ方が上手い。

ライブシーンではエルヴィスのド派手なパフォーマンスと、異常なほどに熱狂する女性観客たちの映像を映すことで、なんだかよく分からないけどとんでもない男が現れたぞっていう当時の雰囲気の一端を味わえるようになってる。それにライブシーン以外では、エルヴィスの曲にこだわらず、ガンガン現代の曲も使ってテンションを上げてくれるのが嬉しい。

ストーリーはスーパースターの栄光と盛衰。スターの伝記映画としてはかなり典型的な展開を行くのだけど、エルヴィスに寄生したスノーマン大佐の視点で語られたりと飽きさせない工夫があるし、何より派手な映像は映画館で観た方が絶対楽しい。

エルヴィスのように人生で一度はこれくらい激しくモテるのを体験してみたい。一般人からすると、ある程度稼いだら引退すればいいじゃんって思うけど、そんな死人みたいなことは考えないのがスーパースター。

ライブシーンもそうだけど、特に冒頭とエンドロールの溢れんばかりの『ムーラン・ルージュ』感に笑った。

このレビューはネタバレを含みます

役者さん達のプレスリーへのリスペクトを強く感じた。主演の方本当にかっこよかった。
パーカー大佐は性格悪すぎてスクリーンにパンチしたくなるくらい腹が立った。


カメラもっと長回ししてほしい。心地良くない。切り替わりが早すぎて役者さんの表情や感情が追えなくて残念だった。
音楽も余計だったり、合わなく感じるところがあった。表現も直接的なものが多くて申し訳ないけど作品としての厚みはあまり感じられなかった。
wallaby

wallabyの感想・評価

4.0
無論5.0。感動しすぎてあまり詳しく覚えてない。未だに世界のトップアーティストであり、人々を魅了し続けてるのが凄すぎる。とりあえず、この時代に生まれ、彼のライブに一度でいいから行きたいと思った。これからしばらくはエルヴィスしか聴かない日が続きそうです。
カトー

カトーの感想・評価

3.5
キングの映画。TCB

予習として1ヶ月弱ひたすらエルヴィス聴いて、観て、読んだから割と良好なコンディションで鑑賞。

純粋なエルヴィスのバイオピックを期待してたので、作風がバズ・ラーマン節効きすぎてて少々面食らったものの結果的には満足。

本作のハイライトは間違いなくオースティン・バトラーの超絶演技。ルックスはエルヴィスに似てるかと言われると微妙だと思うけど、エルヴィスの空気を纏った唯一無二のスター感がビンビン出てて終始鳥肌物の演技だった。エルヴィスじゃないんだけど確実にエルヴィスがいるみたいな... ほんとに凄かった。アカデミー主演男優賞ノミネートは確実でしょう。

主役を喰わないギリギリのところで抑えながらも印象深い演技のトム・ハンクスも流石。トムさんも助演いけるだろうな。

作品としてはあまりにも編集が忙しくて、魅せる所を見せきれてなかった印象。曲もモンタージュでぶつ切りが多いし、ストーリーも端折りすぎかと。もっとじっくりバトラーを見せてほしかったし、歌を聴かせてほしかった。

あとエルヴィスとパーカー大佐の絆がストーリーで一番重要な部分だと思うけど、エルヴィスの大佐へのリスペクトとか忠誠心がスクリーンを通して全く伝わってこなかった。それゆえ中盤以降のエルヴィスの葛藤もいまいちピンと来ず間延びした印象。ここは凄い勿体無く感じた。大佐をわかりやすいヴィランにしたことによって物語が浅くなってしまった気がする。フォーカスも場面によってエルヴィスだったり大佐だったりブレブレなのが気になった。

まとめると、脚本には不満が多々あるけどオースティンの演技だけで十分満足できる作品。あと最後のアレはズルい。あんなん泣いちゃうでしょ。TCB
RIKufilm

RIKufilmの感想・評価

3.2
カリスマ。
大衆文化変えちまうとかかっこよすぎん?
いかれた発想大事
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