◆あらすじ◆
エルヴィス・プレスリーは貧しい家庭に生まれ、黒人音楽の中で育ったことから、他の白人歌手にできないエルヴィスならではの音楽とパフォーマンスで脚光を浴びる。それに目をつけたトム・パーカーは彼のマネージャーになってエルヴィスを使って荒稼ぎをしようとするが、それがエルヴィスの自由さを奪うことになっていき...。
◆感想◆
1950年代に活躍したロックンロールの申し子、エルヴィス・プレスリーの生涯を描いた作品であり、本作ではマネージャーとして彼を利用したトム・パーカーが回顧する形で描かれていて、エルヴィスが白人の支配的な社会の中で人種の壁をぶち破る音楽を貫いた姿勢と金の亡者のごとくエルヴィスを利用して金を稼ぐトム・パーカーへの嫌悪感が印象に残りました。
エルヴィス・プレスリー(オースティン・バトラー)は幼い頃から黒人音楽に触れて育ち、それ故に黒人音楽を自由に歌いこなすとともに身体の動きで感情を伝えており、エルヴィスが人気になったのは人種に関係なく音楽とパフォーマンスの良さが秀でていたことにあり、「本物」はいつだって認められるものだと感じました。黒人差別が当たり前だった白人の権力者たちがエルヴィスを敵視したのも「本物」だったことに他ならないと思います。
本作はエルヴィスのパフォーマンスシーン、特に腰をくねらせて全身でリズムや感情を表現するシーンが印象的で、当時の女性たちが狂ったようにエルヴィスに夢中になった理由は私には分かりませんが、歌とダンスで見せるスタイルは現在のアイドルに通じるものを感じました。本物のエルヴィスの歌とダンスを見たくて、ユーチューブで動画を見ましたが、白人権力者が言うほど卑猥でもなく、カッコ良かったです。
本作の鍵を握る人物としてトム・パーカー(トム・ハンクス)がエルヴィスのマネージャーとしてエルヴィスの稼いだ利益を搾取していったのですが、トムが非常に口達者で相手を丸め込むスタイルは演じるトム・ハンクスの善人面もあってエルヴィスが利用されたのも分かる気がしました。本作ではトムは金儲けだけを重視してエルヴィスがアーティストとして成長することを一切封じ込めていて、嫌悪感しかないキャラクターになっていました。終盤は自分の借金を帳消しにするためにエルヴィスを利用していて、トムがエルヴィスを亡きものにしたという人の気持ちも分かりました。
エルヴィスがもし自由に羽ばたいていたらどれほどのスターになったものか、とつい思ってしまう彼の生涯でしたが、彼のステージで熱狂した人々の気持ちが少し理解できる作品になっていて、面白かったです。日本に来ていたらどんなことをしたのか知りたかったです。
鑑賞日:2025年4月12日
鑑賞方法:CS ムービープラス
(録画日:2024年4月27日)