slow

子供はわかってあげないのslowのネタバレレビュー・内容・結末

子供はわかってあげない(2020年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

真剣になる(緊張する)とついつい笑ってしまう美波のくせ。この笑うという行為は、美波なりに母親を安心させようとしたのが始まりだったのではと推測する。それは新しい家族と上手くやっていくためでもあり、実際本人は手応えも感じていた。そんな毎日を真剣に生きることが常態化した結果、本当に集中したい時にも、笑わなければ!が過剰に働くようになってしまったのではないか。そんな気がする。それは大会でもそうだったけれど、ラストのあのシーンによく表れていて、ちょっとここはやっぱり素晴らしかったな。青春映画にはよくある何の変哲も無いワンシーンのはずなのに、こんなに新鮮な気持ちで観られるなんて。素直に感動してしまった。ある意味美波はずっと第3の目で世界を見てきたのかもしれない。と言うか、わたしたちの大半は、そうなのかもしれない。先のことに気を揉むあまり、本音を言えなくなっていく。だから、ああやって目を伏せられた時、自分の心がはっきりと見えて、スッと言葉が(涙が)こぼれたのかもしれない。これは、母親とのシーンもそうだったろう。母親と父親は、美波に無理をさせていると当然わかっていたと思う。ただ、本音を聞くタイミングって難しいんだろうな。特にこどものそれは。この感想は自分の考察を踏まえてのものなので、全ての方がこう感じるとは限りませんし、本当の真夏であれば日中の屋上や砂浜での正座は火傷するだろうよ!なっ!ていうツッコミはしたよね。あと書道教室の話を伏線にして、お互いを召喚するシーンは微笑ましかったし、短く端的に好きだ!を表現できて効率も良かったと思う。
レビューをサッと流し読んでみると、原作ファンにはウケが悪いのかなと感じる。設定の変更や削った部分が要因なのかも。原作を抜きにしても、邦画はわたしたちにとって身近に感じられるものだし、それを面白いと思えるような物語にするには、リアリティだけでは足りないのではないか。これを観る層は子供より圧倒的に大人が多いわけで、わたしたちが経験してきた言いそうなことと、そうでないこと、起こりそうなことと、そうでないことが、同じ体温で、普段着のように、日常会話やエピソードとして組み込まれていなければ、なかなか面白い作品にはならない。そういう意味では、浮いてしまっている台詞やギャグセンスの古くささが少々気にはなった(監督高齢かと思ったら若くて驚いた)。でも、ここには確かに、もう戻れっこない尊い時間がぎゅううと詰まっていたし、本当久しぶりの沖田作品だったこともあって、なんだかんだで楽しめました。
slow

slow