みかんぼうや

子供はわかってあげないのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

子供はわかってあげない(2020年製作の映画)
3.3
【安定の温かく和み力満点の沖田演出は、やや複雑な家庭環境さえも癒しの舞台にしてしまう。が、沖田映画の中では登場人物にイマイチ魅力を感じられず・・・】

初めて観た沖田監督の「横道世之介」があまりにも好きで(これもフィルマのレビュアーの皆さんのおかげで手を出せた作品です)、一時期、そこから立て続けに沖田監督作品を観て、心を和ませていた時期がありましたが、気づけばかなり久々の沖田作品。おケチぼうやな私は、本作のU-NEXT無料配信を待っていたのでした(数か月前には無料になっていましたが)。

もう安定の沖田クオリティですね。端的に言えば、再婚夫婦の女の子が実の父親に会いに行くという話で、このテーマの作品は邦画でもそれなりに多いと思うのですが、だいたいが親と子のぶつかり合いなどピリピリした緊張感の高い重い内容になる印象があります(先日観た邦画の「幼子われに生まれ」もまさに同じような家庭環境の設定で、かなり重めの映画でした)。

が、沖田作品にそんな緊張感と重さは不必要!このテーマにして、変わらずのクスリと笑わせてくれるほのぼのした内容。親子の間の軋轢なんてほとんど無し。そして、出てくる人々がとにかくみんな“聖人君子のようないい人ばかり”。普段だったら「こんなにいい人ばかりでうまくいくわけないよ」と思いがちですが、沖田作品だと不思議とそれが許されてしまうのが面白い。まあ、“和やかで温かい雰囲気”を求めて沖田作品を観ているわけですから、観る時点でマインドセットができているのでしょうね。

ですが!正直なところ、本作は他の沖田作品に比べると好みではありませんでした(ということで、沖田作品では一番点数低め)。明確な理由があるわけではないのですが、おそらく登場人物にそこまで魅力を感じなかったのが一番大きな要因かな、と思います。

私は沖田監督の“ゆるい大人たち同士のゆるいやりとり”が好きで、「南極料理人」も「キツツキと雨」も一生懸命なはずの大人たちのゆるさがどこか面白くて、そんな登場人物たちの魅力にガッチリ心を掴まれました。一番好きな「横道世之介」は大学時代がメインなので大人とは言い切れないものの、世之介と彼女(吉高由里子)のキャラクターとゆるい会話で成り立つ2人の関係性が、いつまでも見ていられるほど大好きだったので、やはり登場人物の魅力が大きかったと思います。

これらの登場人物たちに比べると、今作の主役高校生2人は純粋で可愛らしいのですが、好感は持てても、引き込まれるほどの熟成された人間的魅力は感じず、また豊川悦司演じる父親にもあまり味を感じませんでした。沖田監督作品は、敢えて嫌な言い方をすると、“大きな展開の動きや強烈なイベントがない”だけに、個人的に“登場人物に惹きつけられるかどうか”がそのまま作品の好みに直結しやすいと思っています。その点で本作はちょっと物足りなさがあったのかもしれません。

しかし、「愛してると言ってくれ」を高校生の頃に欠かさず観ていて、一時期はキムタクを抜かんばかりの勢いの“トヨエツブーム”を作った豊川悦司が、ちょっとボテッとした体のやや頼りない海パン姿を見せる日が来るとは・・・なぜかそのシーンに異様に“時代の流れ”を感じてしまいました。でも、NHKの朝ドラでも思いましたが、オッサンになってもやっぱり素敵ですよね。

ちなみに、本作で個人的にツボり続けたのは、斉藤由貴の「OK牧場!」でした。このお方、本当に年齢不詳の魔性の可愛らしさがありますね。

だんだん物語から話がズレてきましたが、内容にあまり突っ込めないあたり、やはり、個人的に印象薄めの作品だったのかもしれません。
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