メチャクチャ面白かった。個人的には本年度最初の年間ベスト級作品。メキシコで私営の救急隊を営む家族の姿を捉えたドキュメンタリー。しかしほとんどフィクションのような面白さ。小森はるかのように、余計なナレーション、音楽を排除しひたすら被写体の力と整理された編集だけで見せきる姿勢が誠実だしドキュメンタリーとして理想的。この手のドキュメンタリーというのはどうしても視覚的な快楽に欠けがちだがパトカーのサイレンや街のネオンに照らされたメキシコの夜を捉えた画面の数々はとにかく力強い。マイケル・マン作品の1シーンを見ているかのようにカッコいい。基本的にレスキューに向かう様と家族で日常を過ごす様が交互に繋がれるのだがソリッドな演出が施されているためいつ何が起こるか分からない。緊張感がずっと持続する。同時に、余計な演出無しでも表情、仕草から家族一人一人の個性が見出だされていく辺りも見事。突然始まる救急車とのカーチェイスは不謹慎ながら大興奮してしまった。あれを記録できただけでもこの作品は勝っている。「現実は小説よりも奇なり」を体現するエンタメ性をもった傑作ドキュメンタリー。
