TAK44マグナム

ミッドナイト・ファミリーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ミッドナイト・ファミリー(2019年製作の映画)
4.0
オンライン試写にて鑑賞。
メキシコの私営救急車の活動を描くドキュメンタリー映画。
これもまた最近の流行でもある「格差社会」を垣間見るような内容で、頭をガツンとやられました。
自分がどんなに甘い考えで仕事しているのかを思い知らされる内容で、非常にショッキングでしたよ。


自分自身、救急車のお世話になった事は二回ほどあるので、その重要性は少なからず理解しているつもりです。
そこで本作を観て、ふと思いました。
「当たり前のように呼べば救急車が来てくれる。でも、感染症が蔓延している今はどうなのだろう?ましてや巨大災害時は・・・?」

メキシコでは公営の救急車の数が圧倒的に足りず、モグリで営業する私営救急隊がたくさん活動している事にまず驚きました。
でも、少し前に救急医療について論議されていたような気もしますが、日本が今はそうでないだけで、突然の怪我や病気に見舞われても救急車が来ないという事がメキシコの彼らには現実なんですよね。
そして本作は、その冷たく重い現実しか映しません。
変に希望をもたせるなんて事はせず、家族に寄り添いながらも絶えず突き放した目線を変えないのです。
でなければ意味がないからなのでしょう。
一家は真摯に仕事をこなします。
しかしそれがあまりにも報われず、怒りさえ湧きました。
貧困は本当に怖い。
他人事じゃありません。
お金が無ければ病院にもかかれないのは日本だって同じですから・・・

本作を観て一番衝撃を受けたのが、救急車を運転して仕事を切り盛りしている息子くんがまだ17歳だってこと。
日本人では、まだここまで苛烈な状況にある17歳は少ないでしょう。
救急車の運転ができるかどうかはまた別として、とにかくものすごくしっかりしているんですよね。
ドライなんだけれどホットでもあって、人間味がある。
そして、電話でカノジョと話す姿はティーンのそれであって、なんだか少しホッとします。
それにしても、僕も仕事柄、仕事をしても難癖つけられて代金を貰えなかったことが何度かありますが、もし高校生の頃だったらあんなに冷静にいられるものか分かりません。
いや、マジで無理です(汗)

また、民間救急車同士が競い合うように現場へ向かう場面もあって、「おいおい、自分たちが救急車のお世話になるかもしれなさそうだけど!」と心配になる危険な運転も見られます。
こういった場面は、どこかパパラッチの生態を描いたジェイク・ギレンホールの怪演が凄かった「ナイトクローラー」を彷彿とさせます。
しかしジェイク・ギレンホールが演じたパパラッチが私利私欲から犯罪にも平気で手を染めるのに比べて、本作のオチョア一家は人助けに誇りをもっています。
(誇りだけでは生活が出来ないのが辛い)
何となく、両作は「命」を通じて対極にある存在ではないかなと思いました。


息子くんはかなりイケメンなのではないかと思うので、本作の出演をきっかけに芸能人デビューを飾って有名になり、このドン底の生活から抜け出て大金持ちになり、最終的には大統領になって救急医療制度を改革・・・みたいなサクセスストーリーをいつか観たいものです。


オンライン試写にて