こたつむり

スタートアップ!のこたつむりのレビュー・感想・評価

スタートアップ!(2019年製作の映画)
4.0
♪ START START これから始まる
  新しい日が来た2人のSTART
  
うわぁ。これは好きなタイプの作品。
とても躍動感に満ちている物語でした。
高校中退したヘタレな主人公(ケンカ最弱)の成長を描いたコメディ…と目新しさはないのですが、その瑞々しい感覚に、自然と前向きな気持ちになっているのです。

やはり、大切なのは自分の意思ですよね。
どんな中途半端な状況だとしても(寧ろ、中途半端な状況だからこそ)前を向けば光が射し込むことがあるわけで、その姿勢を選ぶのは自分次第。そんな考えが物語の根底にあるのです。

また、そんな雰囲気だからこそ。
物語としての欠点も長所になるのでしょう(あえて欠点としている可能性はありますが)。

例えば、登場人物の掘り下げの甘さ。
普通に考えればマイナス面です。物足りなさを感じる要因になりますからね。しかし、現実を思えば“伏線が活きる”なんて意識しませんし、異性がいれば恋愛感情を抱くとは限りません。それが“リアル”です。

重要なのは自分の選択。
何を思い、何を選択するのか。
それは主人公だけではなく観客も同じ。製作者がお膳立てするのではなく、自身が手を伸ばして決める事柄だと思います。

そして、それを示唆したのがマ・ドンソクの兄貴。おかっぱ頭でアイドルの曲に合わせて踊る…という従来のイメージを壊す人物造形も、穿てば「変化球を投げたいんだな」とイヤミになりますが、そこは観客の考え方次第。

これは監督さんの見事な選択です。
従来の物語構造に添わせないことで、彼の存在感をググっと引き立てていますからね。もしも、クライマックスで物足りなさを感じたら、それは製作者として口角が上がる事実でしょう。

まあ、そんなわけで。
計算して粗削りな筆致で描かれたコメディ。
韓国映画にしては尺が短めなのも良かったです。手触りとしてハリウッドっぽさを感じるのも“狙って”いると思いますが、それが皮肉に見えないのは…監督さんの人徳なのでしょう。

最後に余談として。
3日連続涙腺崩壊の危機は、コミカルな筆致によって阻止されました。良かった…のかな?
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