品川巻

鬼火の品川巻のレビュー・感想・評価

鬼火(1963年製作の映画)
3.8
Radioheadの曲を凝縮したような映画。
「いつも待つだけ、何かが起こることを」「人生が僕には緩慢すぎる」。感受性や心の動きが希薄になっていく虚しさという意味では、トム・ヨークが書く歌詞にかなり近い。

無機質な映像の連続でとてつもなくかっこいいんだけど、時にかったるくて退廃的で、冗長にも緩慢にも見えるし、主人公が体感しているウザいほどの人生の長さを私達まで追体験しているような気になる。歳を重ねるごとに感情の振れ幅が少なくなっていく侘しさもよく表されている。

自殺に二の足を踏んでいるアランは、希死念慮を満タンにしようと、生きる理由が残っていないかと友達や異性に会いに行き、自分を試す。ただそこで分かったのは、彼らの心に触れたくても掴めないし、かと言って頑張る意欲もない、ということだけ。
そんなアランを見ていると、落胆するのではなく、痛みすら感じられなくなるのが抑鬱の着地点なのかもしれないとも思える。ラストは彼にとって緩慢からの解放であり、救済だったのかもしれない。
品川巻

品川巻