チーズマン

鬼火のチーズマンのレビュー・感想・評価

鬼火(1963年製作の映画)
3.5
ルイ・マル監督がエリック・サティの音楽にのせて、モーリス・ロネにパリの街を彷徨わせる映画。

とか書いてたら、あれ?なんかオシャレで良い感じの映画に思えてきた。
いやいやとんでもない。
実際はモーリス・ロネ扮する主人公アランが自殺を思い立ってからふとパリの街や友達を訪ね歩いたりするも結局生きる価値を見出せず自殺するまでの48時間を描いたとにかく鬱々しく無気力な映画。

一見主人公のリア充っぷりに、下手したら「はいはい、カッコつけて勿体ぶってんじゃねえよ」となりかねないところをちゃんと説得力を持って成立させる監督のヴィジョンとモーリスロネの演技が特徴的。
だって別にドン底で物理的に困窮してるかどうかじゃなく、若さを謳歌してきた男が30歳にさしかかり自分のおおよその先行きが見えてしまうが故の“つまらなさ”という話だものね。

タイミングによっては相当響く作品なんじゃないかと思うけど、これがまた今はそういうのに浸りたいモードでは全く無かったことに観ながら気付くことってあるよね。笑

でも、精神的にまいってる時に例えば屋外カフェから座って眺めてる街を行き交う人々が、まるで何か記号のようなものにしか見えない感じはちょっと分かる。
世の中から決して理解されない、そして自分も世の中を理解出来ないという1人だけ違う次元にぽつんと漂うようなあの孤独感ったら無い。
それを目で見て美しいパリの街を舞台に対比させて描かれるから、まあ強烈なこと。