松岡茉優

バビロンの松岡茉優のレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.7
ディミアン・チャゼルは全然好きじゃない映画監督(むしろ嫌い)なんだけど、これはド傑作。
狂乱の時代のハリウッドを抜かりなくちゃんと描いているところにまず感動するし、登場人物達が夢の世界に飛び込んだ後に夢物語で終わらせないところもすごい好き。死人も当たり前の度を超えたパワハラの嵐の撮影現場や使い捨てのスタッフ、カスみたいな奴らで映画が大量生産される様子を描くことで「映画」はただの「まやかし」(終盤の小道具も映画が「まやかし」である最たる例)でしかないと言い切っている気がするけれど、それを楽しみにしている大衆がいることもちゃんと描くところに優しさを感じて泣きそうになった。
チャゼルの撮る歌や踊りのシーンは『ラ・ラ・ランド』同様、相変わらず全く魅力がなくてどうしようもないんだけど、本人もそれを少し悟ったかの如く、あるタイミングで「ホンモノ」をぶち込んでくるあたり自分にミュージカルを撮るセンスがないことをどこかで自覚している気がして、少しチャゼルのこと好きになった。
ただ、撮影は所々死ぬほどダサい。被写体に一度遠ざかってからまたキャメラを近づける(逆も然り)のとか何回やるんだよって感じだし、変な所で切り返ししなかったりするからその辺はセンスない。それに最後のチャゼルの高速オナニーは最悪。「お前の!!!!!!!!!!そういうスタンスが!!!大っ嫌いなんだよ!!!」と叫びそうになった。こんな感じでチャゼル映画の嫌いな所は健在で幾つかあれど、死ぬほど楽しめたので本当に良かった。役者もみんな最高だったけど、今ではネットミームと化したトビー・マグアイア最高。あの下りは『ブギーナイツ』を意識して撮られたと感じたけど、全体的にブギーナイツっぽさあったな。とにかく死ぬほど面白かったのでチャゼルを見捨てた人こそ見て欲しい。
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